【アーカイブ】正体隠しカルトがそばに 新生活の時期に注意 東北学院大学教授 川島堅二さんに聞く〈2018年4月1日号より〉
- 2019/4/26
- 文化・芸術・暮らし
新入生を対象に、駅前や学校前でサークルの勧誘などが盛んな時期がやってきました。学生でなくとも心機一転、趣味などに挑戦する方も多いのではないでしょうか。でも、正体を隠し心の隙間につけ入るカルト宗教には注意が必要です。東北学院大学の川島堅二教授にお話を聞きました。
―カルト宗教(カルト)というと、過去にオウム真理教(オウム、現アレフ)や統一教会が問題になりました。最近では、オウム事件の死刑囚の拘置所移送がニュースになりました。
川島 95年にオウムがVXガスなどの化学兵器で教団にとって異を唱える人を攻撃しました。この年は日本でのカルト元年です。カルトが日本で他人を攻撃したのは初めてです。
―学生がスポーツや文化サークルに誘われて、勧誘に遭うようです。オウムはヨガ教室でしたね。
川島 そうです。怪しさはまったくありません。摂理(キリスト教福音宣教会)という韓国由来のキリスト教系カルトが、大学でサークルを装い布教活動を活発にした2006年は、大学のカルト元年。ヘブライ文化研究会や韓国留学生交流会などと、年ごとにサークル名を変えて姿を隠して近づきます。私たちも対策を本格化させました。
―カルトと聞くと「怖い」というイメージです。問題は。
川島 正体を隠して勧誘することは自己決定権の侵害です。摂理は女性を韓国へ送り、教祖が性的暴行をしたことが大きな問題です。教祖は韓国で裁かれ、刑務所出所のニュースがありました。日本人被害者は事件化できないままです。
―まさに人権問題ですね。
川島 長時間、宗教施設で過ごすことを強要されたり、性の管理もあります。信者同士でないと結婚もできない。付き合う相手が信者じゃないと、集会に連れてくるように言われて別れるよう指導されます。
音楽で組織的宣教
―ゴスペルなど音楽サークルを装ってヨハン早稲田キリスト教会(ヨハン=旧ウェスレアン・ホールネス淀橋教会韓国部)も勧誘を強めているようです。ここでもセクシャルハラスメントが起きていますね。
川島 ゴスペルコンサートは表向きは普通のコンサート活動、しかし組織的な勧誘活動です。音楽を利用して誘い出して宣教します。
―カルトでは金銭要求や搾取もあると聞きます。
川島 ヨハンでは学生は親からの仕送りを含めた1割を献金するように指導されます。つつましく暮らす学生の食費1カ月分です。役員たちは全財産を投げ出したと聞かされて、断れなくされます。
―取り込まれないようにする対策は。
川島 予防が第一、情報の共有が大切です。カルト対策学校ネットワーク(200あまりの大学が加盟)では、情報を共有しています。「正体隠しはいけない」「大学施設は使わせない」など、それぞれの大学でも対応してきました。
―カルト側の対応は。
川島 カルトも抗議文を弁護士名で送ってきます。統一教会などがそうですね。それでも、2008年には無許可で大学施設を利用した組織的な活動がなくなりました。
高校時から狙われ
―カルト問題がなくなっていないように感じます。
川島 街での勧誘は、7~8年前ほどから低年齢化が進んでいます。書店で高校生が参考書を見ていると「○大受けるの?僕は○大生なんだ」などと声をかけます。親近感を持つように仕向け、公民館・公営体育施設で催すスポーツサークルに誘い出す。ツイッターの受験相談もあります。
―宗教と縁がないように感じますね。
川島 そうです。親も受験勉強ばかりではストレスも溜まるし、健康的だと喜んで送り出します。サークルの中で連絡先の他、家族構成や悩みなど親にも言えないことを含め、あらゆる個人情報を聞き出して蓄積します。合格後に学内で「〇〇なんでしょ。相談に乗るよ」と接触します。
―一度、心をひらいているだけに恐ろしいですね。
川島 「自分のことをわかってくれる」と思うから、勧誘は簡単。数年前、ある大学1校で、4~6月に相談を受けた7人中5人がこのような経緯の勧誘です。
―被害者は一向に減らないように感じます。救済の道はあるのでしょうか。
川島 カルトの勧誘をやめさせることはできません。最近では原理主義的なカルトが、若者の心を捉えて攻撃的に活動しています。間違えちゃいけないのは、一番の被害者は信者だということです。「被害にあった」という情報のインプットが大事です。宗教で悩む人は真面目な人。しかし、違いを認め合う、共生が宗教です。カルトはすべてを同じ色に染め上げないと気がすまない反対の位置にあるのです。
(東京民報2018年4月1日号より)