【連載】止めよう都立・公社病院独法化② 都政で出てきたワケ〈5月24日号より〉

 都立・公社病院の地方独立行政法人化が、都政で出てきた経緯(ワケ)は、医療福祉を縮小・市場化・民営化するためです。「地方・独立・行政・法人」とは何か。その不思議を3つの方程式で解いてみましょう。

 前提として、国の場合は「独立行政法人」と言い、自治体の場合は「地方独立行政法人」と呼び、背景とする法律が違います。国の「独立行政法人」が先行し、自治体の「地方独立行政法人」は、後追いでできました。

 第1の方程式は「国産ではなく輸入品。輸入品の変質は、日本の特質(得意技)」です。

 原産国はイギリス。エージェンシー(agency)が原語です。イギリスでは、官僚が杓子定規で市民の顔をしていないから、市民が官僚(特に管理職)と交代すべきであると、市民が「行政責任」を負うことができるようにする目的でエージェシーが創られました。

 日本の政治学行政学には、エージェンシーに該当する用語はありませんでしたから、当初は英語表記で書いてありました。それを「独立行政法人」と翻訳したのは、日本の国家官僚です。そして、市民参加の要素をそぎ落とし、財政緊縮・民営化手法の一つとして変質させてしまいました。

 第2の方程式は「官僚が官僚組織を困らせる様な行政改革は行わない」。

 例示をしてみます。明治期の近代化では、三権分立をどう日本に定着させるか、その日本語訳は大変重要なことでした。

 法律を執行するという意味の「行法」が「行政」になってしまった瞬間、「行法・司法・立法=三権分立」に、行政≫立法≫司法という序列化が内包されてしまいました。独立「行政」法人の用語を残しておけば、官僚の特権(天下り・理事長人事等)は保持されます。

 第3の方程式は、「権力は腐敗する」です。権力をチェックして市民の声を反映させることが、近代民主主義の原則です。

 そのためには、地方自治の場合、住民自治が保障されなければなりません。地方自治では、行政計画へのパブリック・コメント(パブコメ・意見表明権)が、住民参加形態の1つです。

 が、地方独立行政法人化した都の「健康長寿医療センター」は、10年間経っても一度もパブコメを行っていません。地方独立行政法人が策定する計画について、住民自治を行使するルートが遮断されてしまったのです。

 権力チェックの仕組みを一つひとつはぎ落とす行政改革は、都政を知事と高級都庁官僚の「自由」にしてしまうでしょう。

 権力は腐敗する、地方独立行政法人化はその歯止めをなくしてしまいます。

(安達智則・東京自治問題研究所主任研究員)

(東京民報2020年5月24日号より)

関連記事

最近の記事

  1.  「裏金事件」で自民党への批判と怒りが大きく広がるなか、公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途…
  2. 球場とラグビー場の再生案を発表した会=10日、豊島区  神宮球場と秩父宮ラグビー場を取り壊し…
  3.  今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故をうけて11日、日本航空被解雇者労働組合(JH…
  4. 市議会本会議で初質問に立つ荒木市議  市議になる前は、33年間、都内の私立校で数学教員をして…
  5. 伊藤ひろみ市議  議会に送っていただいて、4回目の定例議会が終わり、ほぼ1年経ちました。福生…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る