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【連載】止めよう都立・公社病院独法化② 都政で出てきたワケ〈5月24日号より〉
- 2020/5/18
- オピニオン連載, 都立・公社病院独法化
都立・公社病院の地方独立行政法人化が、都政で出てきた経緯(ワケ)は、医療福祉を縮小・市場化・民営化するためです。「地方・独立・行政・法人」とは何か。その不思議を3つの方程式で解いてみましょう。
前提として、国の場合は「独立行政法人」と言い、自治体の場合は「地方独立行政法人」と呼び、背景とする法律が違います。国の「独立行政法人」が先行し、自治体の「地方独立行政法人」は、後追いでできました。
第1の方程式は「国産ではなく輸入品。輸入品の変質は、日本の特質(得意技)」です。
原産国はイギリス。エージェンシー(agency)が原語です。イギリスでは、官僚が杓子定規で市民の顔をしていないから、市民が官僚(特に管理職)と交代すべきであると、市民が「行政責任」を負うことができるようにする目的でエージェシーが創られました。
日本の政治学行政学には、エージェンシーに該当する用語はありませんでしたから、当初は英語表記で書いてありました。それを「独立行政法人」と翻訳したのは、日本の国家官僚です。そして、市民参加の要素をそぎ落とし、財政緊縮・民営化手法の一つとして変質させてしまいました。
第2の方程式は「官僚が官僚組織を困らせる様な行政改革は行わない」。
例示をしてみます。明治期の近代化では、三権分立をどう日本に定着させるか、その日本語訳は大変重要なことでした。
法律を執行するという意味の「行法」が「行政」になってしまった瞬間、「行法・司法・立法=三権分立」に、行政≫立法≫司法という序列化が内包されてしまいました。独立「行政」法人の用語を残しておけば、官僚の特権(天下り・理事長人事等)は保持されます。
第3の方程式は、「権力は腐敗する」です。権力をチェックして市民の声を反映させることが、近代民主主義の原則です。
そのためには、地方自治の場合、住民自治が保障されなければなりません。地方自治では、行政計画へのパブリック・コメント(パブコメ・意見表明権)が、住民参加形態の1つです。
が、地方独立行政法人化した都の「健康長寿医療センター」は、10年間経っても一度もパブコメを行っていません。地方独立行政法人が策定する計画について、住民自治を行使するルートが遮断されてしまったのです。
権力チェックの仕組みを一つひとつはぎ落とす行政改革は、都政を知事と高級都庁官僚の「自由」にしてしまうでしょう。
権力は腐敗する、地方独立行政法人化はその歯止めをなくしてしまいます。
(安達智則・東京自治問題研究所主任研究員)
(東京民報2020年5月24日号より)