【連載】止めよう都立・公社病院独法化③ 調査研究の3つの成果〈5月31日号より〉

 学問として、独立行政法人問題の解明に取り組んだ先行研究は、ほとんどありません。そこで私たちは、旧養育院の労働組合の協力を得ながら研究チームを結成して、2009年に地方独立行政法人(地独法)化された「旧養育院」「現・健康長寿医療センター」の調査研究を始めました。

 約2年弱の研究成果を2020年2月に『総合研究報告書』として発表しました=入手の問い合わせは東京自治問題研究所03(5976)2571=。

 学問的成果を3つ取り上げます。

 行政学の視点は、「情報公開制度の対象になっている面は東京都と同じである。しかし、住民が意見を述べる仕組みとしてのパブリックコメントは存在しないこと」です。パブコメは、前回ふれましたので、詳細割愛。情報公開制度は、都の制度をそのまま充当するので、手順を踏むと会議録や財政資料を入手できることは、行政研究では知られていないことでした。

 財政学の視点は、「毎年予算編成方針が存在するので予算制度は単年度主義であり、東京都と同じである」を発見したことです。都は地独法にする根拠に都立病院は単年度予算のために柔軟な運営ができないと繰り返し、地独法化されれば解消されるとしていましたが、実は『虚像』でした。

 その健康長寿医療センターは、毎年、予算編成方針があり、その中には「人件費を対医業収益比率の2分の1以内を基準」と明文化されている項目もありました。つまり、人件費を50%に縮減する予算方針です。医療と介護の事業体の平均的な人件費比率は、70%~80%ですから、地独法の予算・財政政策は徹底した人件費削減であることが判明しました。

 社会学(社会調査論)の視点では、職員のアンケート結果についての知見を得たことです。職員調査は、労働組合の調査と経営側の調査で結果に違いが出るのが通常です。

 健康長寿医療センターにおける、労働組合と経営当局の職員アンケートは、看護師の要求の上位に「給与が低いので増額して欲しい」「職員を増員して欲しい」「休みが欲しい」が共通して上位をしめていたのです。これも大発見でした。地独法化された現場労働者は、搾取が強化され、人間らしい暮らしに響いていることが判明しました。

 かつて都職労養育院支部は、都職労委員長を出した組合です。地独法化のなか、第2組合ができて、組合の組織率はかつて100%近かったものが、次第に減少傾向です。現場労働者の団結力・組織力は大幅に弱体化されてしまいました。

(安達智則・東京自治問題研究所主任研究員)

(東京民報2020年5月31日号より)

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