PCR拡大 国と都は真剣に向き合え 経済再開に大規模検査は必須 共産党緊急申し入れ 参院議員・田村智子さんに聞く〈8月23日号より〉

 新型コロナの感染が急拡大を続けています。日本共産党は、感染震源地(エピセンター)を明確にし、そこで働く人や住民全体を対象に、面として感染の有無を調べるPCR検査をすることなどを政府に緊急申し入れ(7月28日)しました。同様の提言は、東京都医師会などからも相次いでいます。日本共産党政策委員長で、申し入れに同席した田村智子さん(参院議員)に、東京の感染状況をどう見ているかと、提案のねらいを聞きました。

 ―現在の感染状況をどう見ていますか。

 5月6月と感染を抑えた状況がようやくつくられましたが、7月になって急増し、今後もこれが抑制される要素がない。非常に心配な状況です。

 8月はじめの段階で、何らかの症状が出ている「有症状者」の数は、4月の最も深刻だった時期と同じ人数になっています。政府は、検査を増やしたことで(無症状などの)陽性者が増えたと言っていますが、実際は有症状の人で見ても4月に並ぶ数字になっているのです。今後、高齢者への感染拡大など、深刻な事態を招きかねません。

検査拡大を求める世論と運動を急速に広げたいと話す田村さん=千代田区

 ―東京の感染状況は。

 感染者が増え続けているのに、検査体制を拡充しないままに、どんどんと制限を解除しました。それでは、感染者の増加を招くことは、わかっていたことで、無策のままに急増させてしまったことに怒りと悔しさを感じます。

感染の拡大を未然に防いで

 ―そうした状況のもとで、共産党として緊急申し入れをした理由は。

 感染が急増しているのに、検査拡大という肝心の部分が立ち遅れています。具体的な対策を求めないといけないと考えました。

 私たちは以前から、戦略的な検査の拡大を求めてきましたが、その「戦略」とは何かには、踏み込んできませんでした。しかし、このままでは何の手立ても打たれないままに、感染が増えつづけてしまう。一刻の猶予もなく、こういう検査をと具体的に示したのが、緊急申し入れです。

 ―感染震源地(エピセンター)への面的な検査という考え方を示しました。政府のいうクラスター対策では、なぜ不十分と考えているのですか。

 クラスターは、どこかほかの場所で感染した人が周りに広げた場所です。それを追っているだけでは感染抑制になりません。

共産党の緊急申し入れの項目

 クラスターを起こすもととなった人や場所、特に無症状で感染力を持つ人を見つけ出すためには、感染の震源地を集中的に検査して、クラスターの飛び火を未然に防ぐ。これが、どうしても必要です。

 新宿区の感染者数や陽性率の状況を見れば、特定の店だけでなく、無症状感染者が集積している地域が、区内に形成されていると考えられます。こうしたエピセンターが、都内各地、日本各地の繁華街地域にも生まれていることが心配されます。

 今回、ヨーロッパなどの対策の状況も調べました。例えば、大規模なPCR検査を進めながら、徐々に経済活動を再開しているフランスのパリでは、駅前に日本の献血バスのような形で、PCR検査のためのテントを置いて、誰でも無料で検査を受けられるようにしています。

 コロナの感染が続いているもとで経済を回すには、これだけの体制を組む覚悟が必要なのです。人が動いて接触の機会が増えれば、どんなに三密を避けようと気をつけても、一定の感染が増えてきます。大規模なPCR検査をすぐに始めることがどうしても必要です。

対策の強化へ臨時国会開け

 ―今回、検査の目的を「診断ではなく防疫」と位置付けました。

 日本では、PCR検査の有効性が常に議論になってきました。

 PCR検査では、鼻の奥の粘膜や唾液を調べることで、くしゃみなどの飛沫になる部分にウイルスがいるのか検査します。

 診断や治療が目的ということになると、鼻や口のなかにはウイルスがないけれど、例えば肺にあったらどうなるのかが問われ、「PCRでは最終的な診断ができない」とよく言われます。しかし、飛沫感染を広げないために、無症状の陽性者を見つけるのが目的なら、PCRは極めて有効です。それが、防疫が目的ということです。

 ―PCR検査の拡充はずっと言われ続けているのに、まったく進みません。なぜなのでしょうか。

 最大の問題は、政府が感染症に真剣に向き合っていないことです。最初から今日まで、真剣に向き合わず、思い付きの政策を出すばかりです。

 厚労省は、私たちの要請の方向で検査対象を広げる「事務連絡」は出しましたが(8月7日)、PCR検査可能数の抜本的な拡充も、保健所や医療の体制拡充も、具体的な手立ては何もとっていません。

 与野党が知恵を出し合って対策に取り組むべきときに、憲法に定められた臨時国会の召集要求にすら応じようとしていないのも、その表れです。

都政が地域を超えた支援を

 ―都政の対応をどう見ていますか。

 7月にこれだけ感染が拡大したのに、小池知事は具体的な対策を何も取ろうとしませんでした。

 新宿区では、地域の医師会が協力して検査スポットを設置していますが、すでにオーバーフロー(上限越え)の状況です。また、陽性率が高い世田谷区も積極的検査に踏み出そうとしていますが、予算や保健所・医療などの体制強化なしには困難です。国や都による財政と人的支援が不可欠です。

世田谷モデルによる検査拡大を実現しようと訴える里吉ゆみ都議=世田谷区

 ―提言への反響は。

 私たちの申し入れの直後に、東京都医師会の尾崎治夫会長も、エピセンターを抑える大規模検査を求められました。世田谷区や沖縄県のように、率先して検査拡大に動く自治体も出ています。医療や自治体の現場の人たちと、思いは一緒だったのだと心強く思います。

 感染が拡大している地域の議員や関係者からは、感染者急増に不安と焦燥感にかられていたなかで、大規模検査の合理的な方向性がわかったという声を聞いています。

 各地で申し入れなどの活動が取り組まれています。政府と自治体を動かすため、検査拡大を求める世論と運動を急速に広げていきます。

(東京民報2020年8月23日号より)

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