高等教育の無償化を運動で FREEがシンポ〈9月13日号より〉

 高等教育無償化プロジェクトFREE(フリー)は2~3日、第5期総会を国立オリンピック記念青少年総合センターで行いました。2日はシンポジウムを中心に、運動の到達点と展望が共有されました。

 シンポジウムでは中京大学の大内裕和教授が「学費減免運動の可能性と課題」と題して講演しました。

 大内教授は日本の大学生の75%が私立大学に通う現状が生まれたのは、戦後直後を除く国立大学の設立抑制と、私立大学の大衆化にあると指摘。ほぼ8割が州立大学で残り2割が私立大学で学ぶアメリカと、原則ほぼ国立大学のヨーロッパなどと比較して、日本はOECD諸国の中で最低水準の高等教育予算であることを明らかにしました。

学費値上げの背景に受益者負担の論理

 さらに学費の値上げの背景に「受益者負担」の論理が可能となった経済成長の存在があったと強調。1990年代半ば以降に親の所得減少があったにもかかわらず高等教育進学率が上昇し続けた背景に、日本学生支援機構の貸与型奨学金の利用の増加があったと解き明かしました。

 2010年代に奨学金延滞者の発生など返済問題が浮上し、「奨学金問題対策全国会議」の結成で運動が起きて一部改善しました。しかし、奨学金利用抑制に伴う「ブラックバイト」の社会問題化を経て、今年のコロナ災害による「バイト難民」の発生につながっていると解説しました。

 4月初旬から大学に対して「学費の減免や説明を学生が求める署名」活動、「一律学費半額を求めるアクション」結成や「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査活動が起こり、野党を通じて学生の声で政治を動かしたと語りました。

 その上で大内教授は、学生生活継続に支障をきたす学生などを対象に、学びを続けるための「学生支援給付金」について、政府・与党の選別主義に基づく施策だと批判。▽共感する社会層を広げる(分断を作らない)▽これから入学する学生との連携▽奨学金の改善▽住宅費と交通費の負担軽減▽ブラックバイトへの批判▽コロナ災害による中退者を出さない▽授業料減免と給付型奨学金の選別主義を改善―など、運動を広げることを訴え学生を激励しました。

 続いて、一律学費半額を求めるアクションと、FREEのメンバーが発言。

シンポジウムにインターネットを介して出演し、話す大内教授=2日、渋谷区

 一律学費半額を求めるアクションのメンバーは「すべての学生が学校施設を使えないのは同じで、(学費免除ではなく)申請主義による支援は分断を生む。学生支援給付金の1次支給は申請30万人に対して24万人が不採用になっている。要件を満たしているのに不採用になった経緯がわからない」と告発。

 また、地方では地元の議会にも行動を起こしていると紹介しました。「和歌山県では教職員組合や新日本婦人の会などに協力を呼びかけて人口の1%の署名が集まるとともに、対話も深まっている」と話しました。

人生の選択肢狭める奨学金返済

 「今の制度では十分に救えていない」と口を開いたのはFREEのメンバー。ひとり親家庭の学生の窮状などを報告しました。

 その後、質疑応答とまとめ発言が行われました。大内教授は「地方の公立大学の増加は、(国立大の新設がないために)学費を下げて欲しいという希望に応えたもの。しかし、私立大学に公金を入れられないということはなく、活動することによって変更の可能性はある」と指摘。「OECD諸国では60%が大学卒業者。日本はそれ以下であり、受益者負担の考えにより高等教育の予算が少ない。運動の前進の可能性はある」とエールを送りました。

 一律学費半額を求めるアクションのメンバーは「学生は遊んでばかりという偏見がある。一方で家庭の平均所得は私立大に通う家庭のほうが低い。学ぶ権利が保障されていない」と発言しました。

 FREEのメンバーは「奨学金の返済の負担で結婚なんて考えられない。人生設計の選択肢が狭められている」と言明。会場からも、「入学検定料が高額で選別はそこで始まっている」など切実な状況が浮き彫りになりました。

(東京民報2020年9月13日号より)

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