年金引き下げ違憲訴訟 東京地裁 被害実態みない不当判決 国の主張に追随〈10月4日号より〉

 国が2013年から15年にかけて一律2・5%の年金減額を行ったのは憲法25条(生存権)、29条(財産権)、13条(幸福追求権)および社会権規約に違反するとして取り消しを求めた年金引き下げ違憲訴訟東京原告団(金子民夫団長、828人)の訴訟で、東京地裁(鎌野真敬裁判長)は9月23日、請求を棄却する判決を言い渡しました。

 この訴訟の対象となった年金減額は2000年から02年にかけての物価スライド特例措置(物価が下落しても年金生活者の生活実態から年金額を据え置いた)によって生じた「特例水準」の解消を名目にして行われました。しかし、政府は特例水準の解消は、物価上昇時に年金額を据え置くことで行うとして、年金減額で特例水準の解消を行うことはないと明言していました。

不当判決に怒りの声をあげる原告ら=9月23日、霞ヶ関・裁判所前

 高齢者の生活実態を無視した年金減額を許せないと2015年5月29日、東京原告728人が東京地裁に提訴。以来、17回の口頭弁論が行われてきました。

 原告団・弁護団の粘り強いたたかいで各回の弁論では2人の原告が、生活実態を丸ごとさらしながら年金減額がもたらす過酷さを訴える陳述を行いました。昨年10月には労組役員、学者の証人尋問と13人の原告本人尋問が行われ、年金減額が受給者にもたらす過酷な実態を浮き彫りにしました。

 これに対して国側は、年金減額についても、広範な立法裁量を認めるべきだと主張。原告側の証人尋問、原告本人尋問では一切反対尋問を行わず、なぜ減額を行うのかについてのまともな説明もありませんでした。

 判決は「公的年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障上の制度であるが、憲法25条の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、…裁判所が審査判断するのに適しない事柄」だと、国の主張に全面的に追随したものです。

原告団表明 直ちに控訴

 原告団・弁護団は不当判決への抗議声明を発表。「本判決は、高齢者の生活実態、原告らの厳しい生活実態に耳を傾けることなく、被告である国の主張に追随した判決であり、人権の保障を使命とする裁判所の役割を放棄したもので、国際人権の水準に全く達しない」と厳しく指摘。「直ちに控訴することを決めた」と述べ、「全国の原告団とともに、必ず勝利するために全力を尽くす」と表明しています。

 年金引き下げ違憲訴訟は、全日本年金者組合の呼びかけに応えて5000人を超える原告が39地裁に提訴するという、社会保障裁判史上最大規模の裁判闘争となっています。提訴に先立って行われた審査請求には、全国の年金受給者12万6642人が申し立てるという空前の規模となりました。

 東京原告団判決を前に、10原告団の訴えを棄却する不当判決が出されていますが、すべての原告団が控訴して高裁でのたたかいに臨んでいます。

 判決後、衆議院第一議員会館大会議室で報告会が行われ、日本共産党の山添拓参院議員、社民党の福島瑞穂党首・参院議員が駆けつけ激励と連帯のあいさつを行いました。

(東京民報2020年10月4日号より)

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