【書評】本質的なアフターコロナ論『コロナと生きる』内田樹・岩田健太郎 著〈2020年11月15日号より〉

 「アフターコロナ論(コロナ以後の世界論)」が盛んです。1918年のスペイン風邪以来100年ぶりのパンデミックです。ヨーロッパでは第二波が拡大中で終息は見えていません。その中で気の早いジャーナリズムは、「コロナ禍以後」の社会はどのように変化するのか?という問題を立て多くの識者に語らせています。

 確かに、コロナ禍の中で、社会的ディスタンス、エンターテイメントやスポーツイベントの中止、在宅ワーク、オンライン会議や授業、いわゆる3密の回避等、私たちの生活は大きく様変わりしました。多くの識者は、この中で「今、どうしているか」「今、どのように考えているか」について語るだけで「現代社会をどのようにとらえるか、どのようにしていくべきか」についての本質的考察は多くありません。

 まず、岩田氏は崩壊寸前の医療現場の経験者として、「メディア報道が何ら実態を報道していない」「PCR検査の意味」「陽性者数のみの報道は(潜伏性が高いこの感染症の)事態がどのようになっているかを表していない」と厳しく批判しています。また、「CDC(疾病対策予防センター)を感染症専門家で設置すべき」と主張しています。

 そして、国民医療費を抑制し保健所を削減してきた新自由主義の医療政策も今回のパンデミックの根底にあると指摘しています。このように、今回のパンデミックと日本の経済政策・医療政策とをリンクさせて論じているのが、この2人の他の論者にない特色です。

 日本社会のありようとして、「コロナ感染が広がる一番の原因は(日本社会の)『同調圧力』」と指摘しています。

朝日新書 810円+税 うちだ・たつる 文学者、哲学者、武道家いわた・けんたろう 医師、神戸大学教授。

 内田氏は、「限られた環境世界のなかで複数の生物種が生き延びていくために、生態学的ニッチ(隙間市場)を『ずらす』という生存戦略(人と「ずれて」生きる)」が大切と言っています。さらに、「コロナ禍で経済格差が拡大している」と社会問題への視線も抜けてはいません。経済回復一辺倒のアメリカのコロナ対策批判も展開されています。

 何冊かのアフターコロナ本の中で、もっとも本質的な議論を展開している本です。(松原定雄・フリーライター)

(東京民報2020年11月15日号より)

関連記事

最近の記事

  1. 「フランチャイズで働く私たちにも人権がある」と訴える学研教室の先生と弁護団ら=11日、千代田区 …
  2. 署名を提出する会のメンバー=15日、狛江市  こまえ図書館住民投票の会は15日、松原俊雄市長…
  3.  国土交通省は、日本共産党の宮本徹衆院議員の質問主意書への答弁書(5日の閣議決定)で、羽田空港での…
  4.  超党派議員の国会議員でつくる「羽田低空飛行見直しのための議員連盟」は11日、国土交通省から先月に…
  5.  日本共産党都議団は12日、米軍横田基地に核搭載可能な米空軍のB52H戦略爆撃機が飛来したことに対…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る