東京外かく環状道路(外環道)は、10月の調布市での地下トンネル真上の工事での陥没事故と地下空洞以外でも問題が山積しています。世田谷区では、中央高速道路(中央道)から、地下の外環道に接続する中央ジャンクション(JCT)付近で住民に説明してきたのと異なる危険な線形の関連道路が作られようとしています。不安を訴える住民に国土交通省は「適当な答え。やり切れば逃げちゃう」と言い放ちました。
問題の場所は高架の中央道から分岐し、地下に向かって下りていく付近(世田谷区北烏山9丁目)です。中央道から分岐して降下していく新たな橋梁の橋脚を建設しています。中央JCT建設によって地上では、生活道路の分断が生じるため施工者の責任で、代替の「機能補償道路」を造る予定です。
そのため2013年から近隣住民への説明が始まりました。当初示された完成予定図では、既存の一方通行路に新設の2車線の機能補償道路がほぼ直角で接続していました(図)。しかし、次に提示された平面図では、2車線道路から一方通行路への接続が橋脚を避ける形で急角度にカーブしていました。
近隣住民は「見通しの良い交差点の計画だったのが危険になる。大型車も通るし、特に夜間などスピードを出した車がカーブを曲がり切れずに飛び込んできたら大変だ」と訴えてきました。国交省の担当者、中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)、工事施工者らは現地の説明を複数聞く中で「直線になる」と複数回説明してきました。
住民「国交省が嘘」
ところが、工事が始まると橋脚は最初の説明と異なり中央道より外側に出ている上に、橋脚土台が地表より高くなっていました。「土台を避ければ直線道路にならない」と近隣住民が申し出ると2月14日、国交省職員は「土台は地下に埋まるので大丈夫」と言ったといいます。
また国交省職員は繰り返し疑問を訴える近隣住民に、「NEXCOの考えは事業地内では何でもいいと考えている。やり切れば逃げちゃうだけ。適当なことを答えているだけ」と暴言。さらに「声を上げる人のところに寄り添って優遇することはない」と責任を放棄する発言をしました。
相談を受けた里吉ゆみ都議と高城訓子世田谷区議は対応に当たり、構造設計1級建築士の菊池大輔氏らと17日に現地を調査。橋脚の土台が地表より高くなっていることを確認しました。20日、国土交通省とNEXCO中日本あての住民の申し入れ書提出に同行しました。
国交省はNEXCO中日本の担当者と対応し、「高速道路との接続の位置だけ決まっている」として機能補償道路などの形状は未定だとして状況を説明。「要望を聞かず失礼な対応だった」と釈明しました。
「地域は高低差もあり、区の洪水ハザードマップにも記載がある。ゲリラ豪雨の時など、機能補償道路造設でさらに、宅地への雨水流入も懸念される。構造物建設の際には近隣の影響を考慮して、丁寧に事を進めて欲しい」と菊池氏が指摘しました。
里吉都議は「住民らは国交省が嘘をついたと思っていて、橋脚の撤去が要望だ。道路の線形を含めて真摯に対応して欲しい」と発言。高城区議は「住民の声に耳を傾けて安全を十分に確保すべき」と訴えました。
「国交省の言うことは信じられない」との住民の抗議に、国交省は「確定ではないので区や警察と話して対応したい」と述べました。
両議員は「住民の納得なしに工事を進めるわけにはいかない」として、引き続きこの問題の解決に力を尽くすとしています。
(東京民報2020年12月6日号より)