一国のリーダーのあり方 『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉』 佐藤美由紀 著〈12月20日号より〉

 「世界でもっとも貧しい大統領」といわれたウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカさんが、10月で政界を引退したと報道されました。85歳です。

双葉社 1000円+税 さとう・みゆき フリーライター。各種の雑誌や書籍に人物ルポや社会レポートなど執筆

 2012年、ブラジルのリオで開かれた国際会議でのスピーチが大きな反響を呼び世界中が注目しました。

 なかでも「貧乏な人とは少ししか持っていない人ではなく、無限な欲がありいくらあっても満足しない人のことだ」の言葉が“もっとも衝撃的なスピーチ”として話題になりました。2016年4月には日本に招かれ、メディアでも大きく取り上げられました。

 著者の佐藤さんは、はるばる30時間以上もかけて地球の裏側にある小さな国へ出かけました。

 「命を賭けて闘った革命の戦士、13年間もの過酷な獄中生活を経験し、一国のリーダーを務めた人。また、自らの生き様で質素の哲学を貫く哲学者でもある」元大統領に会うために。

 そして上院議員である妻とともに出迎えてくれたのは農場に佇む小さな平屋の家と愛車である1987年製のワーゲン・ビートルでした。取材時の開口一番、ムヒカ氏は問いました。「日本は技術がとても進んだ国。そこで私は聞いてみたい。みなさんは本当に幸せなのですか」

 本書では、日本や世界の国々で発せられたムヒカ氏のスピーチから、私たち日本人へのメッセージともなり得る数々の言葉を紹介しています。幸せとは何か、これからを生きる君へ、愛と優しさについて、そして人間ホセ・ムヒカについて。

 「人は独りでは生きていけない。恋人や家族、友人と過ごす時間こそが生きるということ」

 「私は貧乏ではない。質素なだけだ。質素は自由のための闘いだ」

 「(若者へ)学ぶ機会を最大限に活用してください。青春は鳩のように一瞬で飛び去っていきます」

 さらに「我々(ウルグアイ)はヨーロッパや日本を真似してはいけない。痛みや悲しみを伴う発展は必要ないのです。多くの人が幸せになる発展が必要です」と言い切ります。

 一国のリーダーとは?としみじみ考えてしまう一冊です。(なかしまのぶこ・元図書館員)


(東京民報2020年12月20日号より)

関連記事

最近の記事

  1. 1面2面3面4面5面6面 【1面】 余暇と遊びは基本的権利 子どもの権利条約 批准から3…
  2.  待機児童、介護離職、残業、都道電柱、満員電車、多摩格差、ペット殺処分。こう聞いて、すぐに共通点が…
  3.  「裏金事件」で自民党への批判と怒りが大きく広がるなか、公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途…
  4. 球場とラグビー場の再生案を発表した会=10日、豊島区  神宮球場と秩父宮ラグビー場を取り壊し…
  5.  今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故をうけて11日、日本航空被解雇者労働組合(JH…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る