確実に変わっている世界 『連帯の時代─コロナ禍と格差社会からの再生』 伊藤千尋 著〈12月20日号より〉

 自己責任が押し付けられ、人が孤立しがちな日本。「どうせ世の中は変わらない」というあきらめ「無気力」が蔓延しています。これに対し「いや、違う。『自立と連帯』により世界は確実に変わっている」とヨーロッパへの旅から励ましを送ってくれる本です。

新日本出版社 1700円+税 いとう・ちひろ 1949年生まれ。朝日新聞社外報部などを経て、フリーの国際ジャーナリストに

 イタリアは、極右のベルルスコーニ政権の下、コロナ禍で医療崩壊と多くの死者を出していますが、ロックダウン(都市封鎖)の中でもアパートの窓やベランダから歌い合い、声を掛け合う陽気な国民性です。

 8000を超えるコムーネ(コミューン)があり自治の伝統を持っています。日本の市町村数は1700余り。北イタリアでは都市国家の自治の伝統が今も生きています。都市自治の様子をボローニャやフィレンツェを通じて紹介しています。

 イタリアの第2次大戦の終結については初めて知りました。独裁者ムッソリーニを「戦争をやめさせる」ため軍人や側近が逮捕し、その後ドイツ軍に「奪還」されるも、ドイツ軍とたたかい勝利し、連合軍が来る前にイタリアを解放しました。日本、ドイツの敗戦と異なり、イタリアは自力で戦争にピリオドを打ったのです。

 ドイツは、2020年3月のメルケル首相の国民への演説が感動を呼び、迅速な対応で死者を少なくしています。ベルリンの壁崩壊に至るプロセスや、崩壊30周年を迎える市民の様子を伝えています。戦争責任と真摯に向き合うドイツ政府の姿勢も感動的です。

 日本ではあまり紹介されないバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の様子が詳しく紹介されています。

 ソ連(ロシア)とドイツの強国に挟まれ、50年近くもソ連圏として自治を許されなかった三つの国が東欧革命の中で独立しました。ソ連支配の中で、自分たちの民族性を守ったのは何よりも「歌」でした。三つの国の首都を200万人もの人が手をつないで結んだ「人間の鎖」は想像するだけでも感動的です。

 本の帯に「これを読むと元気になります」とあるように、「世の中捨てたものではない」と思わされます。(松原定雄・フリーライター)

(東京民報2020年12月20日号より)

関連記事

最近の記事

  1.  バイオリニストの松野迅さんが、4月27日(土)にけやきホール(渋谷区上原、午後2時開演)でコンサ…
  2. つどいに参加した各党の国会議員、都議ら=7日、国分寺市  多摩地域を中心に都内各地に広がる有…
  3. 街頭宣伝に立つ太田区議  昨年の区議選でセバタ勇前区議から議席を引き継ぎ、およそ1年が経ちま…
  4. 街頭で訴える和氣区議  「戦争のない世界 分断より支え合う社会へ」と掲げ、「あらゆる人の参加…
  5.  噴霧乾燥機メーカー大川原化工機(横浜市)をめぐるえん罪事件で、国と都に1億6200万円の損害賠償…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る