都内の中止自治体は62自治体中37区市町村過半数に(7月7日15時更新)
学校の児童・生徒らに東京オリンピック・パラリンピックの競技を観戦させる「学校連携観戦」に対し、新型コロナウイルスの感染や熱中症など、子どもの健康を心配する保護者らの不安の声が高まる中、中止を決断する都内自治体が広がっています。一方、東京都教育委員会に中止する姿勢はなく、いまだに区市町村への意向調査もしていません。
「学校連携観戦」は、都教委が「子どもたちの心のレガシー(遺産)となるよう準備を進めている」もので、公立の幼稚園・こども園約4000人、小学校約48万人、中学校約24万人、高校約8万人、特別支援学校約6000人、合計約81万人(表)に加え、私立学校で合計9万人、総合計で約90万人が当初、参加を予定していました。
「五輪だけなぜ」 中止署名に反響
新型コロナ感染症の収束が見えず、感染力が強い変異株の脅威が高まる中、「子どもたちを危険にさらすようなことはやめてほしい」といった悲痛な声が保護者や子どもたち、教育関係者からあがっています。
新日本婦人の会江東支部が取り組む、中止を求めるネット署名は6月25日現在、約3万1700人が賛同。コメント欄には「学校行事も様々に縮小され、変異ウイルスが広がる中、五輪だけがなぜ特別なのか。子どもたちにも保護者にも理解ができる説明がほしい」「五輪は即刻中止に!子どもたちを危険な目に合わせることは許せない行為」などの声が寄せられています(下の画像=説明文をクリックすると署名ページが開きます)。
同支部のメンバーで2人の小学生の母親、石川麻弥さん(35)は「3日間で1万人もの賛同署名があり、反響の大きさに驚いています。多くの人が不安に思い、中止を求めているということだと思います」と話しています。
観戦は公共交通機関を利用し、密を避けるとして会場の最寄り駅の手前で下車し、徒歩で向かうケースや、保安のため水筒などの飲み物の会場への持ち込みは1本のみとされるなど、感染リスクに加え、熱暑の中でのマスクを着用しての行動が強いられる子どもたちの健康を心配する声もあります。
ところが政府や東京都、大会組織委員会などの五者協議(6月21日)は、感染リスクを抑えるために無観客が望ましいとの専門家の提言も無視し、観戦者の上限を1万人とし、五輪関係者や学校連携観戦は別枠としました。都教委はこれを受けて、区市町村に対する意向調査を、これから実施するとしており、都教委として中止する考えはありません。
東京都医師会の尾㟢治夫会長は22日の記者会見で、学校連携観戦について「変異株による感染リスクや夏場で熱中症の危険もある時にあり、お子さんをある程度の集団で移動させることは危険」「今の状況下ではやめた方がいい」との見解を表明しました。
共産党 各地で申し入れ
日本共産党の都議団や各地方議員団は、「コロナ禍が収束しない中での連携観戦は、変異株の流行や公共交通機関での移動などの感染拡大、熱中症など子どもたちの命を危険にさらしかねない計画であり、絶対に容認できない」として、学校連携観戦を中止するよう自治体首長や教育委員会に申し入れています。
こうした中、目黒区(6月22日)、文京区(同)、武蔵野市(25日)、小平市(同)、三鷹市(28日)、板橋区(同)、足立区(同)、昭島市(29日)が中止を表明。他にも町村で奥多摩町、檜原村、八丈町、新島村、神津島村、青ヶ島村、小笠原村の中止が分かっています(「しんぶん赤旗」報道)。合わせると15区市町村。この他にも世田谷区の保坂展人区長が、中止を検討すと表明するなど、さらに中止自治体が広がる可能性があります。
文京区は区立小・中学校・幼稚園の児童・生徒1万3千人と引率の教職員1千人を対象としていました。区教育委員会は中止の理由について「感染状況や対策について今後も不確定のため、子どもの安全・安心最優先で判断した」としています。
武蔵野市は市立小学校3年生以上の児童生徒の観戦を希望していましたが、「電車での移動や学年単位の集団での行動は、駅や電車内、また観戦会場での混雑等が考えられ、行動管理、人流抑制は極めて困難」とし、「教育委員会として児童生徒の安全・安心を第一に考え、学校連携観戦を中止」するとしています。
立川市では6月30日、同市教委が中止を発表。理由について感染者数の増加傾向や従来株より感染力が強い変異株の割合増加で感染リスクが高まっていること、学校の引率体制の拡充が難しいことから新型コロナ感染症対策に万全を期すことができないことをあげ、「児童・生徒及び引率する教職員の安全を第一に考えて、学校連携観戦プログラムへの参加を見送る」としています。これに先立ち、共産、立憲、みどりの3党7市議が子どもたちの五輪観戦への動員中止を申し入れていました。
自治体 | 中止理由(カッコは発表日) |
足立区 | 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の収束が見えず、また、かねてからの懸念事項であった観戦会場までの移動に係る熱中症対策にも不安が残る状態で、学校連携観戦における児童・生徒の安全を確保することは、未だ困難な状況(6月28日) |
板橋区 | 新型コロナウイルス感染症及び熱中症への対応、観戦時間及び往復の行程、医療体制に加え、今後の感染状況の見通しが難しいことなどを総合的に勘案(6月28日) |
武蔵野市 | 複数の学校が電車に乗車する駅に集合すること、観戦時間に合わせた電車での移動の場合、ラッシュアワーと重なる学校があるため、混雑が避けられず、密による感染リスクが大きくなること、また、電車での移動や学年単位の集団での行動は、駅や電車内、また観戦会場での混雑等が考えられ、行動管理、人流抑制は極めて困難(6月25日) |
立川市 | 東京の感染者数が増加傾向で、さらに、従来株より感染力が強い変異株の割合が増えており感染リスクが高まっていること、また、学校の引率体制の拡充が難しい中では、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すことができないことなどから、児童・生徒及び引率する教職員の安全を第一に考えて(6月30日) |
共産党躍進が中止に道開く
日本共産党は、自治体の学校観戦の中止を歓迎するとともに、全ての学校の観戦中止と東京五輪そのものの中止を引き続き強く求めています。共産党都議団は6月21日に改めて小池百合子知事、都教育長宛てに連携観戦中止を申し入れました。
一方、五輪開催を推進してきた自民、公明、都ファは、学校連携観戦に反対せず、選挙の中でも五輪開催の是非にもだんまりを決めこんでいます。「五輪を中止しコロナ対策に全力を」と主張する日本共産党が都議選で躍進することが、学校連携観戦の中止はもとより、東京五輪そのものの中止に道を開く大きな力になります。
【東京民報2021年7月4日号より、7月1日WEB版で更新】