東京外環道 大泉でシールド工事を再開 住民驚き「直ちに中止を」〈2021年7月25日号〉
- 2021/7/25
- 外環道
現在、掘削が休止中の東京外かく環状道路(東京外環道)の大深度地下のトンネル工事で、NEXCO(高速道路会社)東日本と中日本は13日、「保全措置」と称してシールドマシンを掘進させると公表。16日から強行されています。掘進工事は練馬区大泉地区の北行き本線で135メートル、ジャンクションのFランプ(連結路)では145メートル掘り進める予定で、工期はそれぞれ3.5カ月と5カ月を要すると発表しています。

発表では掘進する場所はNEXCO所有の事業地内で、地盤が緩いとして改良のためにセメントを注入。セメント改良地盤の固着によりシールドマシンに負荷がかかり、故障の恐れがあるために掘り進む必要があると主張しています。
トンネル工事をめぐっては調布市東つつじが丘地域で昨年10月から地表陥没や、巨大地下空洞3カ所の発見が相次いだことを受けて工事をストップしていました。また、NEXCOが工事に際して意見を求めている「東京外環トンネル施工等検討委員会有識者会議(有識者会議)」の報告については沿線住民だけでなく、大学教授や弁護士からも疑問点や問題点が多々指摘されています。
国交省に抗議声明
大泉側の「トンネル保全措置」と称したシールドマシンによる掘進工事の再開に、沿線住民は驚きと怒りをあらわにしています。
練馬区から世田谷区までの東京外環道沿線住民で構成された団体「外環ネット」と13の賛同団体は14日、赤羽一嘉国交相、NEXCO東日本と中日本両CEO宛の「シールドマシン再稼働に対する抗議声明」を公表。併せて国交省東京外かく環状国道事務所(世田谷区)、東京外環国道事務所(練馬区)と同中日本東京工事事務所(目黒区)を訪問し、声明文を手渡して抗議しました。
声明は「地盤改良区間外までの掘進としつつも、事業用地南端までの最大限の掘進」と批判。地表面変位や振動・騒音の確認と低周波騒音を含めた速報値の日々公表や、周囲100メートルの公道、希望者宅内の被害調査の実施などを要求。住民説明会の不開催についても指摘し、掘進再開の中止を求めています。
日本共産党のとや英津子都議をはじめ沿線自治体議員も、沿線住民と心をひとつに一連の行動に参加。「近隣住民が知らないうちに再稼働させるとは住民無視ではないか。事前に説明するのが事業者の責務だ」と厳しくただしました。
シールドマシンの再稼働につきNEXCOら事業者は練馬区内に相談窓口を設置するとしていますが、これまでの対応が不誠実であったため住民の怒りは収まりません。
発進時から大量の地下水
住民驚き「直ちに中止を」
東京民報は2019年1月26日に行われた大泉からのシールドマシン発進式で、巨大地下トンネルのシールドマシン最先端まで降りて取材。その時、プールに水を注入するような激しい水量で地下水が吐水する現象を確認しました(写真)。

調布の事故の際、NEXCO東日本の職員に「大泉側は地下水量が多く、激しく吐水しているが問題はないのか」と質問しましたが、「地下工事では水が多く出るもの」と異常ではないとの見解を示していました。しかし今回、軟弱地盤改良のためセメントを注入したことは、危機管理が甘く問題を軽視していたという疑問が生じます。
また地盤にセメントを注入する工法をめぐっては、地中がアルカリ性に変化する可能性を地盤工学の専門家が指摘しています。近接する東大泉3丁目地域には、地下水を供給する大泉名水会という上水道事業者もあり、水質の変化を心配する声もあります。
東京民報2021年7月25日号より