都立学校の教職員15人が「君が代」の起立斉唱をしなかったことに対する懲戒処分は違法とし、東京都教育委員会を相手に処分取り消しを求める東京「君が代」裁判・第五次訴訟の第一回口頭弁論が7月29日、東京地裁で開かれました。
都教委が卒入学式などで「日の丸・君が代」の起立斉唱を職務命令とした2003年の通達から約18年がたち、この間に処分された教職員は延べ484人。2007年の第一次訴訟から四次訴訟では減給以上の処分取り消しという「一部勝訴」が続いており、今回は戒告を含むすべての処分撤回を求めています。
口頭弁論では、原告2人と平松真二郎弁護士が意見陳述。これまで3回処分された再任用3年目となる高校の女性教員は、2019年に3年後の任期更新を拒否する事前告知を、都教委から校長を通じて伝えられました。「最も軽いとされる戒告処分で定年後の職を奪われることになる。戒告処分は免職処分に等しく重い」と切々と訴えました。
処分で賃金が減額
特別支援学校の男性教員は第四次訴訟で減給処分が取り消されたものの、戒告処分の「再処分」を受け、多額の賃金が減額されている実態を告発。「思想・信条により、差別的な取り扱いがなされている」と述べました。
閉廷後に、報告集会を開催。原告団と弁護団らが、意見交換や決意表明を行いました。
弁護団は国旗・国歌は国の象徴であり、「日の丸・君が代」である必然性はないと語り、「『日の丸・君が代』は、天皇制国家の時代から連綿と今につながっている」と強調。都教委の処分は憲法19条(思想・良心の自由)、20条(信教の自由)、21条(表現の自由)、23条(学問の自由)などの侵害に当たり、原告の人権が奪われたこと、また、思想・良心に関わる問題について国家は国民に強制できないのに、一方的に処分を下す都教委の不当行為を、最後まで訴え続けると力を込めました。
二次と三次訴訟の原告だった女性は、「生徒に対しても起立を促せと通達されている。教員が生徒に範を示すということがどういう意味を持つのかも、強く訴える必要がある」と声を上げました。
第二回口頭弁論は、11月8日を予定しています。
〈東京民報2021年8月8日・15日合併号より〉