【書評】庶民の心を歌う本物の芸人『カンカラ鳴らして、政治を「演歌」する』岡大介 著〈2021年8月22日号より〉

 庶民の中から生まれた芸能は庶民の心の叫び・怒りを表現するものであり、権力におもねることなく、政治・社会を批判できなければならないと思います。

 しかも、単に主張するだけでなく、そこには風刺の精神があり、ユーモラスがなくては芸とはいえないのです。

 そうした芸を披露してくれる本物の芸人の一人が著者の岡大介です。

 岡大介は、空き缶で作った沖縄の三弦楽器の三線(さんしん)で「演歌」を歌っている日本でただ一人の演歌師です。

 演歌といっても、美空ひばりや石川さゆりなどが歌っている皆さんがよくご存じの現代の演歌ではありません。「演説歌」なのです。

 川上音二郎の「オッペケぺー節」など明治時代の自由民権運動の中で、壮士たちが演説を禁止される中で、窮余(きゅうよ)の策として、街頭で歌って政治批判のメッセージを届けたのが本来の演歌(演説歌)なのです。

 この著作では、明治・大正時代に演歌を流行らせた添田啞蝉坊(そえだあぜんぼう)のことなど「演歌」の歴史をわかりやすく紹介。

 著者本人がその後継者として、現代によみがえらせ、カンカラ三線を持って、各地の演芸場、集会、酒場などで歌い、今日の政治・社会をチクリと批判して歩いていることを語っています。

 小沢昭一、永六輔、落語家、山谷の人々など草の根の庶民…そこで知り合った人々とのふれあいも人情たっぷりの著者の人柄がわかる魅力ある交流です。

 風刺を得意とするピン芸人の松元ヒロとの会話の中で、風刺をやめたら「権力に屈することになる」ことを再確認し、仕事上の不利さを乗り越えて、演歌を歌い続けている著者の生き方のすがすがしさ。

 付録の「カンカラ演歌集」も楽しいものです。「後手後手対策聞き飽きた 煽り庶民を困らせる 丸投げ逃げ出し政治家に つけるワクチンないものか ハテナ ハテナ」。その一節です。

 著作を読んでいただくとともに、ぜひ岡大介の生の演歌を聞いてください。

 きっとその虜になると思います。(話芸史研究家・柏木新)

〈東京民報2021年8月22日号より〉

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