医療供給は深刻な機能不全 知事の楽観発言後、感染爆発

 東京都の新型コロナウイルスの感染爆発が続き、医療危機に直面しています。都のモニタリング会議(20日)で、大曲貴夫国立国際医療研究センター長は「医療供給体制は深刻な機能不全に陥っており」とし、コロナ感染の拡大を「制御不能な状況が続いている」と強調しました。新規感染者は17日から6日連続で4000人を超え、コロナが原因で死亡した人は22日までの1週間で39人にのぼっています。

 同会議で東京都医師会の猪口正孝副会長は、全療養者に対する入院患者の割合は9%、宿泊療養者の割合は4%と「極めて低い水準に低下」と指摘。その一方で「自宅療養者」の患者数が急増。圧倒的多数が「自宅療養」を余儀なくされている実態はますます深刻になっています。

急増する自宅療養

 「自宅療養」の患者は、11日の1万9396人から2万2226人(18日)に、「入院・療養等調整中」の患者数は1万861人から1万2349人と急増していると述べました。全療養者に占める割合は86%に上ります(下グラフ参照)

 猪口氏は自宅療養中に容体が悪化した新型コロナ感染者の「救急搬送、入院受け入れが困難になっている」「緊急を要するけがや病気の患者の救急搬送の受け入れにも大きな支障が生じている」と述べています。

 都は病床を5575床確保(22日時点)しているとしていますが、この間、入院患者は4000人に届いていません。ホテルなどの宿泊療養も3210室確保していますが、療養者は2000人弱にとどまっています。

 しかし、小池知事が新たに進めるのは酸素ステーションの整備にとどまっています。「感染が広がる中、できるだけ多くの方に安心して療養をしていただくための施設だ」と強調しますが、酸素投与が必要な患者は、重症化リスクのある中等症の患者なのに、同施設は治療を目的とするものではありません。

 「自宅療養」を余儀なくされ、悪化しても酸素投与のみで必要な医療を受けられない事態を避けるために、いわゆる「野戦病院」のような臨時の医療施設などを大規模に確保することが早急に求められます。

パラ学校観戦  批判うけ中止広がる

 東京パラリンピック(24日開会)で、政府や東京都が強行する小中高生らを学校ごとに観戦させる「学校連携観戦プログラム」への批判が広がる中、都内自治体で実施を明言するのは杉並、渋谷両区。杉並区は意向調査で参加を希望した2600人を4グループに分けて2日間で観戦させます。新宿区は検討中としています。24日に中止を決めた江東区教委の担当は理由について子どもに感染症が広がっていることをあげ、「子どもたちの安全安心を第一に判断した」と強調。

 東京五輪の際、コロナ感染の広がりで緊急事態宣言が出された都内などでは学校観戦は中止されました。感染状況は、五輪時よりはるかに深刻化し、子どもを競技会場に動員するリスクはいっそう高まっており、保護者、学校、医療関係者から中止を求める声が強まっていました。

〈2021年8月29日号より〉

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