〈一分 9月5日号〉ダイビングの世界に、ヴァーティゴという用語があります…
- 2021/9/5
- コラム・オピニオン
ダイビングの世界に、ヴァーティゴという用語があります。潜水中に視界不良や中耳内の異常で起こる、回転性のめまいです▼耳のなかの気圧を調整する耳抜きがうまく行かなかった時などに起こるというヴァーティゴ。上下や方向の感覚が失われ、パニックの中で、「明かり」と思った方向に泳いでいるうちに、より深く潜っていることもあるといいます▼コロナ対策で、菅政権による事態の楽観視と無為無策が続いています。8月25日の会見で、菅首相は、「明かりがはっきり見え始めた」と語りました▼感染拡大の深刻化により、東京の新規感染者は連日5千人前後を記録し、重症者数も300人に迫るなか、入院などができず、自宅で亡くなる事態も相次いで生まれています。専門家が「救える命が救えない事態となる」と危機感を強めているにも関わらず、首相が「見えないはずの明かり」に導かれて、楽観論のままに突き進んでいけば、国民はより深い命の危機に沈みこんでいくことになります▼憲法に基づいて、野党が要求する臨時国会にも、政府・与党は「見送る方針を固めた」と報じられています。今、必要なのは、臨時国会での徹底した議論で、これまでのコロナ対策を検証し、真の「明かり」を見出すことです。
〈2021年9月5日号より〉