世界で気候危機に対する運動が広がる中、日本共産党は9月に「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」(2030戦略)を発表しました。環境団体などからも「ぜひ総選挙の争点に」と反響が寄せられているといいます。同党衆院議員の笠井亮氏(党原発・気候変動・エネルギー問題対策委員会責任者、衆院比例東京ブロック予定候補)に聞きました。
―どんな反響が寄せられていますか。
全国各地から「未来に希望がともって、心が熱くなった」「気候危機に取り組んでいる研究者や活動家の主張がもれなく入った内容だ」などの感想が寄せられています。
先日も、初めて交流する団体も含めて気候危機に取り組む13のグループと5つの団体と、2030戦略について懇談し、「ぜひ総選挙の争点にしてほしい」「応援したい」などの声が出されました。
―笠井さん自身、長年、気候危機の問題に取り組んでおられます。
2008年に私が団長となって、日本共産党として欧州にこの問題での調査団を派遣し、政策を発表しました。その後も私自身、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)などの国際会議にも参加してきました。
今回の2030戦略は、気候危機というべき非常事態のもとで、最新の科学的知見の到達点を受けて、政治は何をすべきか、半年かけてさまざまな専門家や環境団体の取り組みもお聞きし、まとめたものです。
特に重視して伝えたかったポイントが三つあります。
一つは、科学的知見に政治が正面から向き合い、温室効果ガス削減に向けて思い切った緊急な行動が求められていることです。二つ目に、自公政権が科学無視で低すぎる目標を掲げて世界に逆行していることを厳しく批判し、2030年までに二酸化炭素(CO2)を50~60%削減(10年度比)する野心的な目標への挑戦をはっきり掲げることです。三つ目には、目標実現によって雇用や暮らしを良くして、持続的な発展成長の道を開く、明るい展望を示すことを重視しました。
―世界各地で異常な豪雨や猛暑などが相次ぎ、気候危機を実感します。
国際的な専門家でつくるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の分析では、世界の平均気温は何も対策を取らなければ2100年までに最大5・7度上昇し、現在の対策のペースのままでは、最大3・5度上昇するとしています。
8月に出されたIPCCの第6次報告書は、温暖化への人間の影響は「もう疑う余地がない」と断じています。
この報告書の執筆者の一人である、日本の国立研究機関の専門家に話を伺うと、「科学は精緻になった」として、このままでは今世紀末に後戻りできない破局になりかねないけれども、世界が温室効果ガスの削減にしっかりと取り組めば、破局は避けることができると話されていました。危機とともに、打開の展望も示しているのがIPCCの報告書なのです。
―日本政府の取り組みの問題点は。
2030戦略では、自公政権の取り組みの問題点を、①2030年までの削減目標が低すぎる②石炭火力の新増設と輸出を進めている③最悪の環境破壊と将来性のない電源である原発依存を続けている④実用化のめども立っていない「新技術」を前提にする無責任さ―の4点にわたって批判しました。
自公政権はこの分野でも、コロナ対策同様、科学無視で、あまりに低い目標や逆行する対策にしがみついています。この政治を根本から変えるしかありません。
大事業所の対策が決定的
―2030戦略は社会システムの大改革を提言しています。
日本におけるCO2の排出量は、発電所と産業で全体の6割を占めています。特に注目すべきは、上位85の事業所で排出量の半分、200の事業所で60%を占めるという事実です。これらの大規模な事業所での脱炭素化が決定的に重要です。
2030戦略では、電力、産業、運輸、都市、住宅、自治体など分野ごとに、求められる改革や政策転換を示しました。
同時に、強調したのは、脱炭素化の先にあるのは、衰退した社会ではないことです。専門家による研究も踏まえて、省エネや再エネへの転換によって、年間で254万人の雇用が新たに生まれ、GDPを205兆円押し上げるなど、持続可能な成長の可能性、明るい展望を示すことも重視しました。
―総選挙でも大きな争点となります。
気候危機の打開は、人類的・地球的課題です。世界中で若者の行動が広がり、ノルウェーやドイツの総選挙でも、大きな争点になっています。
日本でも、9月8日に合意した野党の共通政策に、「地球環境を守るエネルギー転換」が盛り込まれています。
IPCC報告書の執筆者に話を聞いた際、「世界に比べて、日本での反響は少ない。特に、政治家から話が聞きたいと反応があったのは、あなた方、共産党だけだ」と話されていました。
科学にもとづき、こうした戦略と展望を示すことができる党ならではの役割があると実感しています。総選挙で躍進し、政権交代によって気候危機に真剣に取り組む政治を実現するために、全力をあげてたたかいます。
(東京民報2021年10月3日号より)