ハンセン病資料館 解決急務の人権侵害 組合員差別で都労委結審〈2021年12月5日号より〉

 国立ハンセン病資料館(東村山市)の運営委託を行う日本財団・笹川記念財団が、学芸員の労働組合員を差別・排除した問題が不当労働行為にあたるとして、国家公務員一般労働組合(国公一般)国立ハンセン病資料館分会は東京都労働委員会(都労委)に救済を申し立てています。都労委が結審したことを受けて11月28日、報告集会が開かれました。

 集会の開会あいさつで中本邦彦国公一般委員長がこれまでの経緯に触れ、「同資料館は2016年4月から日本財団が運営しており、2020年4月からは日本財団が入札に参加せず、新たに参加した笹川保健財団が運営している」と紹介。「日本財団の運営時であった2018年頃から資料館内でパワーハラスメントやセクシャルハラスメントがあり、解決に向けて分会が結成され問題解決の先頭に立ってきた。しかし、日本財団は組合員のみを監視するカメラを設置し、職員が『酌婦』『地蔵』などという蔑称を付けて記録することを容認した」と告発しました。

集会で資料館のあらましを語る稲葉上道分会長=11月28日、千代田区

 さらに「笹川保健財団の運営が決まると前代未聞の『採用試験』を強行し、学芸員としての実績と無関係な『多面評価』と称した職員の相互評価を実施し、組合員2人を不採用とし実質的に不当解雇した許しがたい行為だ」と批判しました。

 解雇された学芸員らから同資料館の歴史と意義についてスライドを用いた丁寧な説明がありました。資料館は「ハンセン病に対する正しい知識の啓発により偏見や差別を解消し、患者・元患者とその家族の名誉を回復すること」を目的とし、1993年に高松宮記念ハンセン病資料館として開館。2007年に厚生労働省所管の国立ハンセン病資料館としてリニューアルオープンした経緯があります。

 学芸員は資料館が患者の権利獲得の運動の中で手作りで生まれたことの他、これまで入所者の脱走防止の堀などの遺構を見つけ発掘調査をしたことなど、過去の過ちから目を反らさずに伝える努力をたゆまずしてきたことを紹介し、語り継ぐ必要性を訴えました。

両財団は一体

 弁護団の今泉義竜弁護士は都労委から来年3月には命令が出るとして、これまでに明らかになったことを報告しました。日本財団と笹川保健財団の関係について、「技術提案書は丸写し、管理運営および労働契約・労働条件などの実態は全く変わらない」として「両者は一体であり、笹川保健財団は日本財団の管理運営を継承しただけ。日本財団が実質的には管理運営をしている」と不当解雇を厳しく批判。

 「資料館はこれまでも1年ごとに委託先を公募し、入札により選定されてきた。学芸員などの専門性を必要とする職員は採用試験などもなく雇用が継続されてきた歴史がある」と指摘。両財団が労働組合を敵視する様子も明らかになりました。

職場復帰まで戦う

 笹川保健財団に運営が引き継がれた今も、雇用が継続された組合員1人はコロナ禍を理由に出勤を認められず、十分に職責を果たすことができないようにされています。また笹川保健財団は「(組合活動を)容認する気は毛頭ありません」と公言し、労働基準法を守る考えがないことが明らかになっています。

 集会には支援者も多く駆けつけました。関西から参加した男性は「国は(ハンセン病関連の)裁判に負け続けている。だから運動の成果や記録を展示されたくない。その意向を汲む資料館運営がされてはいけない。組合員を職場に戻すまで頑張ろう」と訴えました。

 組合員らは「一番こたえたのは学芸員同士が対立させられ、職場環境が悪化したこと。でも負けられない。職場復帰まで戦い抜く」と決意を表明。参加者は惜しみない拍手で激励しました。

 同争議を支援する会は署名や支援カンパを訴えています。

(東京民報2021年12月5日号より)

〈WEB版追記〉支援する会のホームページはこちら

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