都立・公社病院「廃止・民営化」も 都議会代表質問 独法化で里吉都議が告発 ジェンダーの視点あらゆる施策に 気候危機、若者の危機感共有を

 東京都が押し進める都立病院・公社病院の地方独立行政法人化で病院の「廃止・民営化」を含めた定期的見直しが求められることを7日、日本共産党の里吉ゆみ都議が代表質問で告発しました。独法化の理由として小池百合子知事が「行政的医療を将来も続けるため」としていた説明との矛盾が浮き彫りになった形で、説明責任が問われます。

独法化中止をと求める里吉氏=7日、都議会

 都は9月都議会で地方独立行政法人「東京都立病院機構」の法人定款を提出し、自民、都民ファースト、公明、維新などの賛成多数で可決しました。都は独法化の理由について「行政的医療を安定的・継続的に提供していくため」「(都立病院の役割は)民間医療機関だけでは対応が困難な行政的医療の提供であり、この役割は独法化しても変わりません」(都ホームページ)などと説明しています。

 ところが「地方独立行政法人」法30条では、3~5年ごとに業務継続や組織存続を検討し、業務・組織の廃止などの措置を講ずるよう規定しています。総務省は「廃止・民営化を含めた定期的見直し」を行う条文だとしており、都立・公社病院が将来、「廃止・民営化」される可能性があるのです。

「独法」法で見直し規定

 里吉都議はこうした問題を示した上で、「都立・公社病院の独法化には、この30条は適用されないのか」とただしました。西山智之病院経営本部長は「(独法化で設立される)東京都立病院機構には同法第30条の規定が適用される」と明言。「(独法の)業務の継続や組織の存続など全般にわたる検討を明示的に定め、必要に応じて所要の措置を講じることを趣旨としている」とのべました。

 里吉都議は独法化で採算性の低い精神病床を段階的に7割削減した国立精神・神経医療研究センターや、160床以上に病床を削減する一方、差額ベッドを大増床した都の健康長寿医療センター、独法化10年目に突然、県内の公的病院との統合・再編方針を発表した宮城県立病院などの事例をあげ、公立病院とは異なり「見直しの最大の指標にされるのは、効率性や採算性だ」と指摘しました。

住民・議会の関与は弱く

 里吉氏は独立性を優先する独法化で、住民や議会の関与が弱くなるとして、「独法化で住民監査請求や住民訴訟の対象外となるのではないか」と質問。西山本部長はそれらの規定はないと認めながら、都の財政支出は住民監査請求の対象、中期計画認可の議会の議決があるなどとごまかしました。

 里吉都議は小池知事の所信表明で、コロナ禍であらわになった構造的な課題はデジタル化の遅れだとのべたことに関連して、知事には「東京と日本の医療のぜい弱さがコロナ禍であらわとなった構造的な課題」という認識がないと批判。「そのことが、かけがえのない都立・公社病院を強引に独法化しようとしていることにつながっている」とのべ、独法化の中止を重ねて求めました。

ジェンダー平等 施策の基本に

都政の重要課題について質問する里吉都議=12月7日、都議会

 コロナ禍で明らかになった女性への影響は、自殺や失業、DVの増加、ひとり親、若年女性、単身女性の状態の深刻化など、多岐にわたります。

 里吉都議は「コロナ禍の直接的影響だけでなく、日本の構造的な問題となっているジェンダー不平等が背景にあるという認識はあるか」と質問。「ジェンダーの視点をあらゆる政策や施策の基本にすえる『ジェンダー主流化』が、国連をはじめ世界の流れになっている」とのべ、性犯罪・性暴力被害者を支援する、病院支援型を含むワンストップ支援センターの拡充を求めました。

 小池知事の答弁はなく、武市玲子生活文化局長が「政策や施策の企画、立案の段階から、男女平等参画の視点をもって進めることは重要」と答えました。

困窮支援策

 国民健康保険運営協議会で、法定外繰り入れを行わない場合、都内の一人当たり国保料が、来年度9・4%も上がり、17万2155円にもなる試算が示されています。里吉都議は「都として一般財源を投入し、国保料・税の引き上げにならない手立てをとることが必要だ」と迫りました。

 また来年度から未就学児の均等割保険料が5割削減されることに触れ、都市長会が都独自の軽減措置を要望し、都も国に対象拡大を求めているとのべ、「率先して都として拡充すべきだ」と、要求。中村倫治福祉保健局長は、子どもの均等割軽減について「国が責任をもって対応すべきもの」と、都民要望に背を向けました。

 里吉都議はさらに、コロナ禍から都民の暮らしを守る支援策として、国の住居確保給付金を都独自に支給期間(1年間)の制限をなくし支給上限額を引き上げる、都営住宅の4年間で2万戸規模の増設、中小・小規模事業者などへの都独自の支援などを提起しました。

気候危機打開

 里吉都議は若者たちが気候危機の打開に向けて行動に立ち上がっていることを紹介し、「若者たちの危機感を共有しているか」と、知事の認識を質問。都が本気で脱炭素化を目指すというなら、知事が先頭に立ち、全庁一体となって取り組む局横断の気候危機対策本部をつくり、気候危機対策予算を抜本的に増やすべきだと提起しました。

 その上で既存都有施設への太陽光パネル設置の促進、市区町村所有施設への太陽光パネル設置への自治体支援、「東京ゼロエミ住宅」(都独自に定めた断熱材や窓を用い、省エネ家電を取り入れた住宅)導入促進事業の来年度予算の増額、拡充などを提案しました。

 小池知事は「気候危機への対処は一刻の猶予も許されないもの」「都民、企業、行政等あらゆる主体に行動の加速を呼びかけ、ゼロエミッション東京を実現していく」と答えました。

東京ベイ戦略

 都が発表した「東京ベイまちづくり戦略」のたたき台で示された、東京・千葉を結ぶ第2東京湾岸道路建設、築地、有明、お台場など臨海地域の巨大開発計画について、里吉都議は巨大な無駄遣いだと批判。巨大開発はいったん動き出すと容易に止めることはできないとし、臨海副都心開発の大失敗の総括もせずに、バラ色に描くことはやめるべきだと主張しました。

 同戦略はIR(カジノを中核とする統合型リゾート)誘致を含む都の官民連携チームの提案も参考にするとしており、里吉都議のカジノの具体化も考えているのかとの質問に、小池知事は答えませんでした。

 里吉都議はこの他、子ども・若者への支援、教育施策、防災対策、米軍の基地対策、外環道とリニア新幹線の工事、情報公開について質問しました。

(東京民報2021年12月19日号より)

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