虎の魅力を再認識 多摩動物公園 干支の企画展 「日本人と寅」や野生の今〈1月2,9日号より〉
- 2022/1/1
- 文化・芸術・暮らし
日野市の都立多摩動物公園では、2022年の干支・寅年にちなみ、虎(トラ)をテーマにした企画展「とらえてみよう トラの魅力」が4月5日まで開催されています。ことわざや絵画などを交えて学ぶ「日本人と寅」、同園で飼育されている「アムールトラの生態」、トラの現状や保護活動を紹介する「野生での今」の3つのエリアに分け、パネルを使って解説。実物大のトラの模型やトラの子のはく製、頭骨、トラが登場する絵本なども展示しています。
多摩動物公園には現在、落ち着いた性格のシズカ(雌15歳)、一番体が大きいアルチョム(雄6歳)、マイペースなイチ(雌6歳)の3頭のアムールトラがいます。
同企画展に2歳の娘を連れ、友人(23)と一緒に訪れた母親(23)は、「寅は私たちの干支。やっと来たか、と楽しみにしています。21年はコロナの印象しかない。22年に期待します」と思いを述べました。
友人同士でトラを眺めていた60代と70代の女性は、「かわいいよね。企画展にも行ったよ。実物大の模型を見ると、迫力を再認識する」と話します。
スケッチの授業で同園を訪れた専門学校に通う男性3人は、「オンライン授業で引きこもり状態だった」「ここにきて開放的な気持ちになることができた」「来年は卒業制作に取り組むので忙しい年になりそう」など、口々に語りました。
極寒の地に生きるアムールトラ
トラは食肉目ネコ科で、1種類しか存在しません。生息する地域や環境、生態により、9つの亜種に分類されていますが、すでに3亜種は絶滅し、6亜種のみ現存しています。
アムールトラ(別名・シベリアトラ)は、ロシアのシベリアと中国北東部に広がるタイガ(針葉樹)の森に生息。全長2・5~3㍍、体重150~250㌔とトラの中では最も大きく、1日に約10㌔の肉を食します。
寿命は約15年(飼育下では約20年)。冬はマイナス30℃に達する極寒に耐えられるよう、体温が逃げにくい大きな体に生える冬毛は他の亜種より密で長く、体色は明るい黄色で、茂みの中でも目立ちにくい細い縞模様が特徴です。
野生では1歳までに約4割の子どもが森林火災や大雪などの災害、雄による子殺し、不慮の事故などで死亡します。美しい容姿は毛皮やじゅうたんなどに好まれ、漢方薬としても人気が高く、乱獲・密猟が横行。さらに100年間で違法伐採が進み森林が減少し、1900年代初頭に生息していた世界で約10万頭のトラが4000頭前後に減少したと推定され、絶滅の危機に瀕しています。
2022年はトラが生息するロシアやインド、バングラデシュ、中国など、13か国の政府が一堂に会する「グローバル・タイガー・サミット(トラサミット)」が開かれる予定。前回2010年の同会議で合意された、野生のトラ個体数倍増目標の進捗しんちょくが報告されます。
2022年は60年ごとに訪れる「壬寅(みずのえとら)」。春の芽吹きを意味するといわれる年が、トラにとってもよい一年になることを願います。
(東京民報2022年1月2,9日号より)