【アーカイブ連載】妊娠葛藤相談の現場から②居所のない若年妊婦たち〈2021年3月21日号より〉

 ピッコラーレが大切にしている支援の一つに、「面談・同行支援」があります。私たちと電話やメールのやり取りをする中で解決の糸口が見え、そこから先は自身の力で課題を解決していく相談者もたくさんいますが、一方で、危機的な妊娠をしている状況下にあって、その先の支援に確実につながるために伴走が必要な方たちもいます。

 そのような場合は、その方がいる場所まで相談支援員が出掛け、直接お話を伺い、保健センターや福祉事務所などの行政窓口、医療機関、警察や法テラスなど、その方が必要とする様々な連携先に付き添うサポートをしています。

 同行支援に至るケースの中には、公園やネットカフェ、友人宅や恋人ではない男性の家などを転々とし、居所が定まらず「漂流」している、あるいはその状況に陥る可能性のある若年妊婦(未成年を含む10~20代半ば頃まで)からの相談も少なくありません。

 漂流する若年妊婦の多くは、妊娠をするずっと前から、貧困、虐待、暴力、不安定な就労、精神疾患など、自分だけでは決して解決することのできない、いくつもの社会的な困難を抱えたまま生きています。

 本来なら誰もが保障されるべき生活の基盤となる衣食住もままならない状況に置かれ、安心できる居場所もなく、誰かにSOSを出しても受け止められず、ひたすらなんとか生きのびてきた状況下での妊娠。そしてこの妊娠によって、なんとか維持してきた日々すら奪われてしまうかもしれない、そんな恐怖が原因の「妊娠葛藤」が日本には存在している。そのことにどれだけの人々が気づいているでしょうか。

 厳しい状況の中で、勇気を振り絞って出してくれた漂流している若年妊婦からのSOS。しかし、それをしっかりと受け止め、ゆっくり安心して妊娠のこと、今後のことを考えられる空間や時間を提供できる「若年妊婦のための居場所」が日本には不足していることを、これまでの活動を通して痛感してきました。

 「足りないのだったらつくろう」。若年妊婦に「いつでもおいで」と言える安心で安全な「ホーム」を、彼女たちの声を聞きながら、信頼できる仲間、地域の人たち、そして応援してくださる人たちと一緒につくろう。そうして始まったプロジェクトが「project HOME」です。

 助成金やご寄付でのご支援をいただき、2020年春、無事にHOME第一号「ぴさら」(フィンランド語で「しずく」の意味)を豊島区に開設し、これまでに宿泊/デイ利用を含め、10人を超える妊婦の方が利用しています。(特定非営利活動法人ピッコラーレ事務局長 小野晴香)

(東京民報2021年3月21日号より)

関連記事

最近の記事

  1. 1面2面3面4面5面6面 【1面】 余暇と遊びは基本的権利 子どもの権利条約 批准から3…
  2.  待機児童、介護離職、残業、都道電柱、満員電車、多摩格差、ペット殺処分。こう聞いて、すぐに共通点が…
  3.  「裏金事件」で自民党への批判と怒りが大きく広がるなか、公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途…
  4. 球場とラグビー場の再生案を発表した会=10日、豊島区  神宮球場と秩父宮ラグビー場を取り壊し…
  5.  今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故をうけて11日、日本航空被解雇者労働組合(JH…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る