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- 【アーカイブ】新型コロナ禍 冬の健康維持 自宅での運動を習慣に 理学療法士 寺岡かおりさんに聞く〈2020年11月22日号より〉
冬の寒い時期が迫り、新型コロナとインフルエンザの同時流行が心配されています。この時期は運動などの活動量が減り、健康維持が難しい季節でもあります。東京民報で2019年に高齢者のフレイル(心身の活力が低下した状態)を防ぐ方法を連載した、寺岡かおりさん(理学療法士)に、春に掲載した「自粛期間中の健康維持に気を付けたいこと」(4月19日号)に続き、この時期の健康づくりのポイントを聞きました。
フレイル予防の3本柱
寺岡さんは、東京保健生協で地域の健康づくりに取り組んでいます。「フレイルの予防は、運動、口腔・栄養、社会参加の三本柱が大切」と話します。

気温が下がる冬の時期は、気温差による血圧の急激な上昇(ヒートショック)による心筋梗塞や脳梗塞などが起こりやすくなります。
寺岡さんは、この時期に運動する際の注意点として、①早朝や夜など寒い時間帯は避ける②できるだけ室内で運動し、屋外でする場合は家の中で準備体操をする③屋外での運動では、首元や手首、足首を覆って外気に直接さらさない服装にする―ことをあげます。
栄養では、免疫力と体力を向上させるため、バランスのよい食事が大切です。「取りたい食品の十品目の頭文字をとった『さあにぎやか』に『いただく』(左下表)を目安に、さまざまなものを食べ、食事をおいしく、楽しくいただきましょう」

口腔の面では、「口の中の細菌が、インフルエンザウイルスの感染を促進する可能性が、最近わかってきた」といいます。
歯みがきはもちろん、フロス・舌掃除など、口の中の汚れをしっかり落としきることが、感染予防でも重要です。「歯医者さんでクリーニングをしてもらうことも効果的です」
交流し不安和らげ
運動については、日常生活のなかに運動の習慣があるかどうかで、健康維持の明暗がくっきり分かれているといいます。
これから、インフルエンザと新型コロナの同時流行が予想されるもとで、気を付けたいことを、次のように話します。
「自宅内でのストレッチや筋トレ、階段昇降などの運動を習慣化してください。人ごみの多い場所は避けて、一人または少人数で運動すると同時に、運動実践の様子を、電話やインターネットなどで友人や指導者と報告しあうことも心掛けてください」
外出自粛期間が長引き、スマホやインターネットを使いこなせない高齢者には、人との交流自体がなくなり、つながりの希薄化、不安感の増大などがみられるといいます。
日常の運動を仲間や指導者と交流することで、体力を維持するとともに、感染への不安感や恐怖を和らげることもできます。東京保健生協では、スマホやパソコンを使ってインターネットで交流できるよう、高齢者向けの教室も開いており、大人気だといいます。
体操の動画を公開
東京保健生協のホームページでは、自宅で簡単にできる体操の動画を、寺岡さんの実演で公開しています。
運動をする際は、①ストレッチ②筋トレ③バランス④有酸素運動―の4種類を組み合わせます。

東京保健生協の組合員にアンケートすると、バランスの運動に取り組んでいないことが多いといいます。「高齢者でも若い人でも、年齢を問わず、4つの運動を組み合わせることをおすすめします」
ホームページで公開している体操は、4種類の運動のうち①ストレッチ②筋トレ③バランス─の3つを含んでいます。これまで運動習慣がなかった人でも取り組みやすい強度で、時間も10分ほどで構成しています。
曜日ごとの運動の動画があり、「1週間通すことで、全身の筋肉をまんべんなく動かすことができる」ものです。
動画は、寺岡さんが博士課程で研究する筑波大学の大藏倫博研究室が作成した「外出等自粛要請期間中のフレイル化予防運動の手引き」をもとに作成しています。
「運動強度は低めですが、丁寧に行うことで、運動効果を得られやすくなります。物足りない方は、1セットの回数やセット数を増やしてみて下さい。身体があたたまったところで、有酸素運動をやると、さらに効果的です」
今後、膝痛や腰痛を持つ人向けの運動や、下肢筋力をもっと鍛えたい人向けの動画も作成する予定だといいます。
(東京民報2020年11月22日号より)