
日暮里駅を出ると西日暮里3 丁目。目の前の夕焼けだんだんの階段をおりれば、谷中銀座、よみせ通りへと続く道。昔からの街並みが続き、まるで昭和に戻ったような懐かしさに満ちている。軒先には植木や花が満ち、まちの人はその暮らしを楽しみ、いとおしんでいるようだ。いつもはガイドブックや、地図を片手に歩く人たちが行き交うが、彼岸の今日は、花を携え家族連れで歩く人たちとすれ違う。谷中には、70 を超える寺がある。
彼岸が過ぎれば、谷中霊園の桜並木、長名寺のしだれ桜も咲き競う。此岸の谷中は春を謳歌する。
写真・文 夏目安男
〈東京民報 2015年3月22日号より〉
※WEB版追記 写真家の夏目安男さんは2021年12月に亡くなりました。ご遺族の許可を得て、東京民報での連載「わがまち東京」をWeb版連載として掲載します