
春のうららの 隅田川…。あの「花」の一節だ。
吾妻橋から桜橋にかけての長堤には、1000本の桜並木が続き、錦織りなしている。川面には花びらが舞い、お花見の屋形船や水上バスがしきりに行きかう。
墨提は江戸時代からの花見の名所。両岸にはたくさんの露店が並び、桜の樹の下は車座、土手沿いの路は花見客であふれる。桜橋あたりから陽気なかっぽれの音が聞こえてきた。
桜は、咲き始めのわくわくするような期待感、満開の満足感、散りゆく花の寂寥感と人生そのものだ。修学旅行の女子中学生たちが対岸の景色を見ながら、楽しそうに語り合っていた。
写真・文 夏目安男
〈東京民報 2015年3月29日号より〉
※WEB版追記 写真家の夏目安男さんは2021年12月に亡くなりました。ご遺族の許可を得て、東京民報での連載「わがまち東京」をWeb版連載として掲載します