緑と住環境の破壊許さず 世田谷区 二子玉川でマンション紛争〈2022年4月3日号〉

 多摩川風致地区や鳥獣保護地区に指定されている多摩川沿いの住宅地、世田谷区玉川で、マンション建設をめぐり環境保全の観点や建設事業者の不誠実な態度への不信感から、住民が反対の声を上げています。

 かつて葛飾北斎が富岳百景に描いたように、多摩川周辺は松林が広がり、桜並木や竹林などの植物に恵まれた緑豊かな地域でした。

 2000年に総面積約11.2ヘクタールにわたる大規模な二子玉川東地区市街地再開発が定められ、東急・二子玉川駅の東側に高さ100メートルを超す巨大ビルが登場。都市化が進み、街は様変わりし、多くの自然が消失しました。

5階建てマンション建設計画地=3月20日、世田谷区

 問題のマンションは、不動産会社の環境ステーション(中央区)が建築主となっている5階建て(高さ14.7メートル)、ワンルーム29戸の建築物。河川沿いの道路を正面に、三方は2階建ての住居に囲まれています。第二種風致地区に当たるため、「周辺建造物群のスカイラインとの調和に配慮し、著しく突出した高さの建造物は避ける」など、細かい建築基準が区で決められていますが、5階建てが「著しく突出した高さ」に値するのか、事業者との認識の差に、住民は複雑な思いを抱いています。

 草木が茂る当該地を更地にするため、事業者は風致地区の条例にのっとり、20年8月19日に伐採の許可申請書を提出。わずか2日後に区から許可が下り、伐採工事が始まりました。住民が許可申請書を確認すると、事実と異なる樹木数や粗雑な植樹計画図が記されていることが判明。担当者にただしたところ、「正確な本数の記載は必要ないと区から指導を受けた」と答えました。「手続きの流れの中に住民が意見できる機会がなく、ずさんなやり方がまかり通っている。これで自然が守れるのか」と住民は語り、風致地区条例の形骸化を危惧します。

 住民が兼ねてより要求していた説明会が実現したのは昨年11月末。住民側の質問や要望に事業者側は正面から答えず、口論のようなやり取りが続き、到底納得できる説明会ではありませんでした。

 今年3月に2度目の説明会が設定されましたが、事業者側が隣接住民以外は会場に入れず、争いになったことで延期。この日のやり取りの中で、すでに建築確認申請書を民間の指定確認検査機関に提出し、許可が下りていることが発覚しました。早々と工期が決定しており、工事に伴う道路使用許可も取得済み。住民は「これではつくり逃げだよね」と憤ります。

 事業者が住民への重要な資料配布を拒むために正確な情報が得られず、あいまいな緑化計画、プライバシーの無配慮など、山積みの問題に悩まされています。さらに駅前の高層ビルが原因で発生している風害が、マンションの建築により風が干渉しあい、より強力な風被害が起こる可能性も示唆されています。

 住民の粘り強い運動により、現在2回目の説明会開催の確約、着工延期が決定。住民は「歴史ある水と緑の二子玉川を守りたい」と話します。

〈2022年4月3日号より〉

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