クリスマスの季節になりました。この行事はなんと私たちの生活に定着してしまったことでしょう。今回は、とっても古いけれどダイヤモンドのように輝き続ける小さな本を紹介します。
1897年のある日、ニューヨーク・サン新聞社に一通の手紙が届きました。こんな文面で。
「きしゃさま。あたしは八つです。あたしの友だちに、サンタクロースなんかいないんだっていっている子がいます。パパにきいたら、サンしんぶんにといあわせてごらん、しんぶんしゃでサンタクロースがいるというなら、そりゃもうたしかにいるんだろうよ、といいました。ですから、おねがいです。おしえてください。サンタクロースってほんとにいるんでしょうか? バージニア=オハンロン」
新聞社の編集長はフランシス=P=チャーチ記者にこの子への返事を社説に書いてみないかと言いました。そしてその社説が小さな美しい本になりました。

記者はこんなふうに語りかけます。
―サンタクロースなんていない、というあなたの友だちは間違っています。それはうたぐりや根性のせいでしょう。うたぐりやは心がせまいため、自分のわからないことはうそだと決めているのです。けれども人間が頭で考えることなんて限られています。宇宙は限りなく広く、人間の知恵はありのように小さい。その小さい世界でわたしたちが深い世界を推し量るには大きな深い知恵が必要なのです。この世の中に、愛や人への思いやりや、まごころがあるのと同じように、サンタクロースもたしかにいるのです。
―もし、サンタクロースがいなければどんなに暗く寂しいでしょう、人生の苦しみを和らげてくれる子どもらしい信頼も詩もロマンスも無くなってしまうでしょう。
―この世でいちばん大切なものは目に見えないものなのです。ただ信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが見せてくれるのです。
なんて美しい言葉でしょう。そして新聞社という存在がこんなにも信頼されていたのかと驚きです。ぜひ、全文を味わってみてください。(なかしまのぶこ・元図書館員)
(東京民報2021年12月19日号より)