都立高入試 会話テスト導入見直しを 研究者、保護者らが集会

 東京都教育委員会が2023年度の都立高校入試から予定する英語スピーキング(会話)テストについて、公平性や客観的な採点に疑問があるなどとして導入見直しを求める集会が3月29日、都議会内(新宿区)で開かれました。オンラインを含め 150人を超える人たちが参加しました。英語の研究者や教育者らでつくる実行委員会が主催しました。

都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の見直しを求めて開かれた集会=3月29日、都議会棟

「客観的な採点に疑問」

ベネッセが実施

 都教委が実施しようとしている英語スピーキングテスト(ESAT‐J=イーサットジェー)は、「『話すこと』の能力を測るアチーブメントテスト(編集部注=学力テスト)」を名目に、大手教育関連会社のベネッセコーポレーション(ベネッセ、本社・岡山県)と協定を結び、来年度の都立高校入試から導入するというもの。今年7月下旬から9月上旬にウェブによる申し込みを受け付け、11月に全公立中学校の3年生(約8万人)を対象に実施します。

▶問題1 公平採点に膨大な手間

 集会では元公立中学校の教員が問題提起。公平で客観的な採点のためには膨大な時間と手間が必要なことを、研修を受けた自らの体験に触れて説明。「採点者間のすりあわせがどこまでできるのか疑問だ」とのべ、音声データのため採点ミスがあっても情報開示できずブラックボックス化する危険や、吃音、難聴などハンディーのある生徒への対応不備―などの問題点をあげました。

 さらに▽授業と英語教育への弊害▽家庭の経済格差による学力格差を生む▽個人情報漏洩の危険性と利益相反の問題▽コロナ禍で生徒や学校現場への更なる負担増―など、数々の問題を例示。「話す力は生身の人間の豊かな感情や表現を伴った英語に触れたときの感動がなければ、学び続ける意欲にはつながらない。ぜひ見直しを」と訴えました。

▶問題2 全プロセスがブラックボックス

 羽藤由美・京都工芸繊維大学教授(当時)は、都教委のテスト実施方針について解説。試験実施団体は受験料を収入源として独立採算で運営し、都が財政支援することや、今後、私立高校や道府県にも広げ、聞く、読む、書くにも広げようとしていると説明。「新たな民間の資格・検定試験の立ち上げ費用を都が負担し、その新商品の販売拡大ためのプロモーションを都教委が行い、事業者は独立採算で利潤も損益も事業者のものだ」とのべました。

 また、「受験者にとっては受験からスコアを受け取るまでのプロセスは全てブラックボックス。その中には『テストの質、公正性・公平性』と『事業者の利潤』との間でトレードオフ(相容れない関係)がある」と強調。「ブラックボックスの中で何が行われているかを外から推測しても、事業者は独自のノウハウであることを隠れ蓑にして情報を秘匿し、議論は成立しない」と指摘しました。

▶問題3 手続きないがしろ

 久保野雅史・神奈川大学教授は、英語を話す力を身につけるという「『実体的正義』を振りかざして、『手続的正義』をないがしろにしていいわけがない」とのべ、スピーキングテスト導入と実施業者にベネッセが選定された背景や過程について説明。

 民間事業者が英語教育に参入する契機となったのは「政治主導の教育『改革』にある」とのべ、第一次安倍晋三内閣の教育基本法の改定(2006年)で、「国が教育内容をコントロールすることを決めたからだ」と分析。第二次安倍内閣の第二期教育振興基本計画(2013年)で示された小学校外国語の教科化や、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(同年)による「英語力改善のための『英語力調査事業』」をベネッセが請け負ったことなどを紹介しました。

 都では2013年6月の東京英語教育戦略会議に産業界有識者としてベネッセが加わっていたこと、2017年12月の「都立高校入学者選抜英語検査改善委員会」で、「話すことの検査は、民間の資格・検定試験実施団体の知見を活用することが有効」と報告し、2019年3月に事業者を募集し、実質3日間で応募のあった4件からベネッセを最優秀提案者に決定した経緯を解説しました。

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