
亀戸天神社の藤は4月下旬から一斉に咲き始める。周りは、スカイツリーや高いビルに囲まれてしまったが、ここだけは別世界。頭の上から垂れ下がる紫の藤の花が、赤の太鼓橋とともに青い心字池に映えるさまは、広重の「江戸百景」の景色そのままだ。境内には100以上の露店が出て、江戸情緒を味わう人で賑わう。特に、満開のゴールデンウィークのころは歩くのも容易でないほどだ。
澄み切った青空、太鼓橋の赤、あでやかな藤の色、どんなに混んでもこの時期ならではのもの。帰りは、レトロな香取勝運商店街から亀戸大根の碑のある香取神社にも寄ってみよう。
写真・文 夏目安男
〈東京民報 2015年4月19日号より〉
※WEB版追記 写真家の夏目安男さんは2021年12月に亡くなりました。ご遺族の許可を得て、東京民報での連載「わがまち東京」をWeb版連載として掲載します