【アーカイブ】作家 早乙女勝元さんに聞く 戦争の記憶、未来につなぐ 歴史の現場への旅、復刻出版〈2020年7月12日号より〉

 作家で東京大空襲・戦災資料センター名誉館長の早乙女勝元さんが、世界各地の戦争と平和の現場を旅して、当事者に取材した作品のシリーズを、新日本出版社から出版しています。2月には最新刊となる「ゲルニカ」を出しました。ナチスドイツからの無差別爆撃を受けたスペインの町ゲルニカを訪ねるルポルタージュなど2作品を収録しています。

 出版しているのは、1980~90年代に戦争と平和を伝える現場を訪ね、関係者に話を聞いてまとめた作品です。その多くは、写真集「母と子でみる」シリーズとして、30冊ほど出版されたものですが、現在は入手困難になっています。

 今回は、文章を中心にすることで1冊に2つの作品を収録し、さらに出版後に起きた出来事をはじめ最新の状況を注釈として書き加えるなど、「復刻版的な新版」(早乙女さん)としてまとめています。

ゲルニカの空爆体験者に会って

 最新刊に収録した作品の一つでは、ピカソの傑作絵画のモチーフになったことで知られる、スペインの町ゲルニカを訪問します。

 当時のスペインは、反ファシズムの人民戦線に属する共和国政府でした。政府への反乱軍を率いたフランコ将軍を支援するため、ナチスドイツが1937年4月26日にゲルニカの町を無差別爆撃します。爆撃のニュースを聞いたピカソは、怒りに震え、1カ月ほどで、巨大な壁画を完成させました。

さおとめ・かつもと 1932年東京生まれ。作家、東京大空襲・戦災資料センター名誉館長。主な近著書に『空襲被災者の一分』(本の泉社)、『蛍の唄』(新潮文庫)など多数

 「東京大空襲や広島、長崎の原爆投下に至る、一般人の大量殺りくを招く都市爆撃の実験台、端緒となったのがゲルニカです。私自身も12歳で東京大空襲を経験し、空襲の体験記録の運動をするなかで、ずっとゲルニカのことが気にかかっていました」と、早乙女さんは話します。

 旅では、ゲルニカの町を訪ねる前に、マドリードでピカソの「ゲルニカ」の実物を見ています。

 フランコ将軍による独裁政権が長く続いたこともあり、早乙女さんが見る数年前までは、右翼による襲撃を警戒して、ゲルニカの壁画は全面、防弾ガラスに覆われていたといいます。訪ねたときには、ガラスもなく、直接見ることができました。

 「東京で見た写真による複製と違って、実物のゲルニカは躍動感にあふれ、登場人物がみんな『動いて』いました。20世紀の戦争とはどういうものか、象徴的に訴えた、世界的な名画です」

 初めて訪ねたゲルニカは、「小さな町でした。マドリードから、飛行機でビルバオという都市まで行き、さらに30キロを車で移動する。なかなか厄介でした」と振り返ります。

 シリーズの大きな魅力が、現地で当時を知る関係者に直接会って、取材していることです。80年代、90年代にはまだ、第二次大戦中の出来事などを体験した当事者が多く生きていました。

 ゲルニカでも、空襲を体験した3人の住民から、防空壕で息をひそめていた様子や、爆撃後にフランコ反乱軍が町を占領したときの様子などを聞いています。

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