ハンセン病資料館 都労委が「職場復帰」命令〈2022年5月22日号〉

組合員「誠実に履行を」

都労委の命令を受け、厚労省への要請後に会見に臨む当事者と弁護団= 10 日、 千代田区

 国立ハンセン病資料館で国家公務員一般労働組合(国公一般)ハンセン病資料館分会の組合員2人が、職場から排除された問題で9日、東京都労働委員会は「職場に戻す」よう求める画期的命令を出しました。国公一般と同分会は10日、記者会見を開き「笹川保健財団は『救済命令』を誠実に履行すべきだ」と訴えました。

 同資料館は東村山市にある国立療養所多磨全生園に隣接し、ハンセン病への理解と差別の解消を目的として、元患者の権利回復運動の歩みなどを展示し啓蒙する施設。入所者自身が運動資料などを展示してきた社会交流館が前身で、全生園の自治会や全国ハンセン病療養入所者協議会と親密な関係にあります。

 今回、職場復帰を勝ち取ったのは、同資料館で最初の学芸員として貴重な資料や遺跡の保存活動などに長年携わってきた稲い なば 葉上たかみち道分会長と大久保菜央分会員。両者は2020年4月1日付での日本財団から笹川保健財団への委託替えに伴い、これまでに例のない採用試験で不採用とされ職場から排除されていました。

 同分会は同資料館内でのハラスメントや労働基準法違反の横行の改善を求めて結成。当時、運営委託を担っていた日本財団に対して改善要求を行ってきました。しかし、日本財団は改善どころか組員を防犯カメラで監視。侮蔑的な別称で監視記録を記すなど人権侵害を継続的に行い、日本財団と密接な関係にある笹川保健財団に委託が引き継がれてからも続きました。

一連の問題で国公一般と同分会は10日、委託元である厚生労働省に対し「命令を履行するように指導せよ」などと要請しています。

 国公一般は「人権の砦でおきた人権侵害は直ちに是正し義務を果たすべきだ。両財団は命令に不服申し立てをすることなく、違法行為と人権侵害をやめるべき」と述べています。

民間委託のしわ寄せが

 会見では弁護団の今泉義竜弁護士が、「命令は職場に戻せということと、陳謝せよという柱からなっている」と解説。ハラスメントについても認定されていると述べました。

 また弁護団は「国立ないし公立施設での民間委託は、ダンピングをしないと入札で勝てない仕組みがある。その中で人件費が最大の経費なため、労働者へのしわ寄せありきの制度だ」と告発。併せて「受託企業が入れ替わるために、1年間の有期での不安定雇用が前提で、労使関係の悪化は構造上起こりうる」と指摘しました。

 さらに「労働基本権を守らせるべき厚労省の直営で、人権侵害被害を発信する施設での二重に不当な労働行為が行われた。パワハラやセクハラをなくす省庁で横行していたとは恐るべきことだ」と強調しました。

 稲葉分会長は支援者に感謝を述べ、亡くなった元患者ら資料館を作ってきた先人に「確実に戻って(療養所利用者の思う資料館のあるべき姿に向けて業務の)続きをやれと言うと思うので、『やります』と伝えたい」と命令履行に向けてたたかう決意を語りました。また、大久保分会員はこれまで2年の期間は長かったと前置きし、「多くの市民がこの問題をともに考えてくれ、署名を集めるなど協
力してくれたことが後押しになった。元患者はかわいそうな人ではなく、たたかい続けた人たち。伝えるために、たたかい続ける」と語りました。

〈2022年5月22日号より〉

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