【書評】コロナ禍の混乱は自然災害か 『コロナ禍で見えた保健・医療・介護の今後―新自由主義をこえて』 公益財団法人日本医療総合研究所 著

 久しぶりに、保健・医療・介護そして福祉の総合的な議論を展開した本に出合いました。新型コロナのパンデミックの中で、日本国民は罹患しても、医療にもかかれないという大変な不安を経験させられました。未知のウイルスによる感染症であったとはいえ、先進国であるはずの日本でなぜこのような「医療崩壊」「福祉崩壊」が起きたのか? この疑問に答える一冊です。

 この本は、保健(予防・公衆衛生)、医療提供、介護サービス、そして生活保護をはじめとする福祉を、それぞれの専門的立場から分析した、研究者グループによる集団的労作です。よく保健・医療・介護・福祉と並べていわれますが、財源や歴史的経過など、それぞれ異なった仕組みで運営されています。

新日本出版社 2022年 2400円+税 にほんいりょうそうごうけんきゅうじょ 保健・医療・福祉に携わる労働運動関係者が協力しあい、1979年に労働者の健康の増進と福祉の向上に寄与することを目的に設立

 それを理解したうえで、現状・課題を整理して今後の展望を描くことはかなり困難な作業です。当書は、若手研究者を中心にこの困難な課題に挑戦し、問題の解決方向を示しています。

 政府が進めてきた医療費政策を「公的医療費抑制政策」として把握し「利用者負担・保険料」を増大させ、税金の投入等の公的負担を削減する政策と特徴づけたのは今日的到達点です。つまり、医療は300万人近い従事者と年間44兆円を超える医療費を抱える一大産業であり、製薬企業などの活動の場(もうけの場)でもあります。いたずらに縮小だけを求めることは産業界の望むことではありません。

 産業としての規模を確保しつつ税金等の公的負担を回避し、国民の負担を強化する方法がとられます。

 この他、地域医療構想の実施、地域包括ケアシステム導入、医療・介護への外国人労働者の導入の可能性、最後のセーフティネットとしての生活保護制度などの、新たな動向と議論も紹介しています。そして、「一見すると自然災害に見えるコロナ禍も、新自由主義の各種政策により被害が増幅された。この新自由主義的政治・経済を問い直し、転換を図らねばならない」と結んでいます。

 ちょっと難しいところもありますが、医療福祉の関係者、議員等のオピニオンリーダーにはぜひ読んでほしい一冊です。

(松原定雄・ライター)

(東京民報2022年6月19日号より)

関連記事

最近の記事

  1.  「世界の有力国で、将来の指導者をCIAが選んだ最初の国は日本だった」▼情報公開された文書やインタ…
  2. 8 月、子どもたちとのぶどう狩りで  「園でどんぐりの闇取引が横行しているらしく、息子が毎日…
  3. NEXCO東日本の対応について記者会見で話す被害住民ら=11日、調布市  東名高速道路と関越…
  4.  日中友好協会港支部は11日、アイヌ文化の継承活動を精力的に行っている若手の活動家・関根摩耶さんと…
  5.  この本は、良心的な心の糧になる本を出し続けている本の泉社が、山本周五郎の「人情ものがたり」を描い…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

ページ上部へ戻る