【コラム砂時計】秋の値上げと軍事産業〈10月9日号より〉
- 2022/10/3
- コラム・オピニオン

10月中に食料品6500品目以上が値上げされる。スーパーに買い物に行くと、ためらいがちに商品をかごに入れるお年寄りの姿が目に付いた。値段はどれも高くなっている。コーヒー豆など容量が少なくなったものも多い。レジ係の女性にそれを言うと「そうなんですよ」と困った表情をみせた。この秋は医療費窓口負担増など、生活を圧迫する材料に事欠かない。
対照的に業績の見通しが明るいのが軍事産業である。ウェブサイト上の「防衛産業売上高ランキング」によると、1位から順に三菱電機、三菱重工業、富士通、東芝、ダイキン工業、NECと続いている。東芝、NEC、富士通といえばパソコンのメーカーとして身近な存在だが、「防衛産業」でもある。
主要企業の生産品目を見ると、三菱重工業(戦闘機)、三菱電機(ミサイル、レーダー)、川崎重工業(潜水艦、ヘリコプター)、石川島播磨重工業(軍用機器のエンジン)などとなっている。
ロシアのウクライナ攻撃を伝えるテレビを見ればわかるように、レーダーで捉えた標的に向けて正確にミサイルが発射される。それを電子機器が支えている。
2017年にノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器の禁止・廃絶を目指す国際団体)などが核兵器の製造、開発、備蓄、実験、使用に関わる企業への投資を制限する金融機関をリストアップして注目されている。
近代兵器は、核兵器の搭載、運用が可能とされている。ロシアがウクライナ侵略に際し、核兵器の使用をほのめかしている今、融資にとどまらず軍事機器の製造そのものにも制限を課すべきではないだろうか。
こうしたなか、岸田内閣が防衛費を倍加し、攻撃能力の強化に踏み込む考えだ。これは、国債発行による国家財政の破綻や増税など、いっそうの国民負担を招きかねない最悪の選択といえよう。(阿部芳郎・ジャーナリスト)
(東京民報2022年10月9日号より)