【書評】不思議な世界へ導くレシピ本 『新装版 亡命ロシア料理』 ピョートル・ワイリ、アレクサンドル・ゲニス 著/沼野充義、北川和美、守屋愛 訳
- 2022/10/4
- 書評
1970年代、25万人ものユダヤ系ロシア人がイスラエルやアメリカに渡った。この本の著者ワイリ氏(ラトヴィア生まれの新聞記者)、ゲニス氏(ロシア生まれ、ラトヴィアに住むジャーナリスト)もヨーロッパを経由してアメリカへ。ニューヨークのロシア人街に居を構えた2人は料理好きでもあり、美食家でもあったのでしょう。コーラとハンバーガーから決別しようと、こう呼びかけます。
「私たち文学料理人としての義務は、途方にくれたわれら亡命ロシア人社会に、優れた料理に対するよき感覚を植え付けることです」と。そして、ロシア料理にはほとんど無知であろう「西側」に対してこう啖呵たんかを切るのです。「ロシアが遅れた野蛮な国だと思われていることはわかり切っている。嫌われてもいるし怖がられてもいる。だからといってそれがロシア料理とどんな関係がある?文化大革命のせいで中華料理の評判が傷ついているだろうか?第三帝国が罪を犯したからってソーセージやバイエルンのビールと世界は縁切りしただろうか?」と。