岸田首相が10月28日、物価高騰に対する総合経済対策を発表しました。総額は29兆円まで積み上げたものの、電気代やガソリン代などへの部分的な対応が並ぶのみ。抜本的な賃上げへの対策や、消費税減税といった、根本的な政策には手付かずのままです▼その一方で政府からは、家計を冷え込ませるような話ばかりが聞こえてきます。75歳からの医療費負担は2倍化が導入されたばかり。検討中の介護保険制度見直しは、保険料の負担年齢を引き下げるとともに、要介護1、2の人も保険給付から外すなど、「史上最悪」とも評されるものです。そのうえ、消費税を10%からさらに増税しようという思惑まで。まさに、国民の消費にアクセルとブレーキを同時に踏み込むような対応です▼経済政策の混乱で有名になったのが、イギリスです。トラス前首相が掲げたのは、富裕層や企業向けの減税策。金持ちが潤えば、庶民にいずれお金が回るという古めかしいトリクルダウン政策のうえに、財源もあいまいで、イギリスの国債が大きく下落する事態を招きました▼新首相となって、わずか40日余りだったトラス氏は辞任に追い込まれました。ちぐはぐな経済政策が何をもたらすかは、岸田首相にとっても大事な「他山の石」のはずです。
〈東京民報2022年11月6日号より〉