【書評】民営化阻止、市民運動で 『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』 岸本聡子 著

 筆者は、6月に杉並区長選挙で当選した新杉並区長です。この本は筆者がヨーロッパで研究してきた水道事業の「民営化と再公営化」を詳しくレポートしているだけでなく、民営化阻止・地方自治発展のための情報と示唆に富んでいます。

 驚くのは、日本では1980年代以降、公共事業の民営化が逆らいようのない流れとして感じられていたのに対し、欧州では、民営化路線の破綻で「再公営化」がどんどん進んでいるという事実です。水メジャーの本拠地フランスでは、1985年に水道事業全般にわたる民営化契約を結びました。これ以降パリ市の水道料金は2009年までに265%も値上がりしました。民間企業の「財務報告」がずさんで、パリ市はこれをチェックできなかったのです。

集英社新書 2020年 820円+税 きしもと・さとこ 1974年、東京都生まれ。公共政策研究者。2022年6月の杉並区長選挙では市民とともに闘い当選

 2018年、日本の水道法が改定され、「コンセッション方式」(水道事業の運営権を民間企業に売却するもの)が可能となりました。

 しかし、岸本氏が所属していたシンクタンクの調査によれば、世界各国で267の水道事業が民営から再公営化され、さらに、電力・地域交通・ゴミ収集・教育、健康・福祉サービス等7分野では45カ国835もの再公営化の事例が出ています(2017年現在)。今、ヨーロッパでは公共サービス全般にわたり脱民営化・再公営化・公営化が「大きな流れとなって」いるのです。

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