【コラム砂時計】運賃値上げと福祉タクシー

 

 

 昨年11月14日から東京23区と武蔵野・三鷹地区のタクシー運賃が値上げされた。国交省によると今回の運賃改定は2007年以来約15年ぶりで、14・24%の上昇率となる。

 具体的には、普通車の初乗り額(上限)が420円から500円に、乗車距離は初乗り1・052㌔㍍から1・096㌔㍍、加算額は80円から100円に、加算距離が233㍍から255㍍となる。大まかな計算だが5㌔㍍移動したとすると1700円が2000円にアップする。

 昨年来、食料品をはじめとする多くの生活必需品の値上がりが相次ぐ中、タクシー運賃改定が国民生活に少なからぬダメージを与えることは間違いない。ただ今回の運賃改定の中に「タクシー乗務員の労働環境の改善」を図ることも含まれている。

 タクシー運転手の全国平均賃金は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて月収40万円を割り込んでいる(全国ハイタク連合会)。また改定が東京23区・武三地区に限られたのは、神奈川、埼玉より東京の賃金水準が低いことも理由の一つで、タクシー運転手などが加盟する自交総連東京では賃金など労働条件向上に確実に結実させようと取組みを強めている。業界はこの要求にしっかり応えるべきだと思う。

 他方、運賃改定のあおりをまともに受けるのが障害者手帳1級、2級の人たちだ。23区の福祉タクシー制度を調べると年間約3万円のタクシー券(またはガソリン代補助)が給付されているところが多い。

 週に3回の人工透析が欠かせない患者などには、タクシー代補助は「命綱」の一本ともいえる。ただし、この額は通院費用の一部を賄うだけで、行政はこれを機に運賃上昇分のスライドにとどめず、制度の充実を考えて欲しい。かつて介護の必要な家族(障害1級・車椅子使用)を抱えていた実感からも切実な要求だ。(ジャーナリスト・阿部芳郎)

(東京民報2023年1月15日号より)

関連記事

最近の記事

  1. ① 発がん性物質PFAS「都は汚染源特定し対策を」多摩地域 都調査で21自治体検出 ② 日比…
  2.  9月17日から一週間、パリを訪れました。昨年11月、フランス大使館から連絡があり、同国外務省主催…
  3.  岸田内閣の首相補佐官に15日、国民民主党の元参院議員で、同党の副代表を務めた矢田稚子氏が就任しま…
  4.  株式会社東京民報社の第51期定時株主総会が9月22日、港区内で開かれ、事業報告や決算報告などが原…
  5.  急激な物価高や光熱費の高騰が国民生活を侵食し疲弊させているにもかかわらず、政府与党は効果的な施策…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

10月1日の制度開始が目前に迫ったインボイスに反対する、52万人超の署名の受け取りを岸田文雄首相に求める集会が9月25日、開かれました。インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP! インボイス)が主催。1000人以上が参加し、オンラインでも同時配信されました。
#日本共産党 の #山添拓 参院議員が9月17日から1週間、フランス・パリを訪れました。フランス外務省主催で毎年、世界各国から75人を招待する「将来を担う人材招聘プログラム」の対象となったもの。連載コラム「未来を拓く」特別編として寄稿してもらいました。
#日本共産党都議団 は9月20日、多数の樹木を伐採する #神宮外苑再開発(新宿、渋谷区)で、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関 #イコモス(国際記念物遺跡会議)が再開発撤回を求める「ヘリテージ・アラート」発令などを受け、改めて秩父宮ラグビー場の移転建て替えを中止し、現在地での再整備を検討するよう盛山正仁文部科学相と日本スポーツ振興センター(JSC)あてに申し入れました。
#新宿区 は8日、#明治神宮外苑 の再開発事業者が申請した25本の樹木伐採を許可しました。このことに対し市民グループ「#未来に子どもたちの笑顔をつくる神宮外苑を考える会」は12日、新宿区役所前で抗議のスタンディングを行い、約40人が参加。#神宮外苑 をテーマにした #サザンオールスターズ の曲「#Relay ~ #杜の詩」を合唱し、「かけがえのない日本と地域の宝、神宮外苑を壊さないで」と訴えました。
環境省が東京電力福島第1原発事故で発生した汚染土を、#新宿御苑(新宿区内藤町)の花壇で「再生利用」する実証事業を計画している問題で、#日本共産党 議員や住民らは14日、環境省から直近の状況説明を受けるとともに、実証事業を強行しないよう求めました。
政府が10月から導入をねらう「#インボイス(適格請求書)」制度を止めようと、#日本共産党 の #小池晃 参院議員・書記局長とさまざまな分野のクリエーターらが語り合う懇談企画が14日、ネット中継されました。品川区議会で、インボイス延期の請願に取り組んだ「#品川フリーランスの会」が主催したもの。声優やイラストレーター、写真家、演劇人などが、小池氏と語り合いました。
ページ上部へ戻る