2023年が始まりました。岸田政権が敵基地攻撃能力の名で進める大軍拡路線との対決の年です▼アジアにおける軍事強化の対立が何をもたらすのか、一つのシナリオを示しているのが『米軍と人民解放軍』(布施哲著、2014年・講談社)です。米軍と深い関係があるシンクタンク、ランド研究所などが行った軍事シミュレーションをもとに、近未来にアメリカと中国が軍事衝突に至ったらどのように戦争が推移するのか、詳細な分析をしています▼分析では、総体的な戦力では米軍が優るものの、中国が大量のミサイルによる攻撃で、戦争初期の短期的には優位に立つ可能性を指摘。米軍は「エア・シー・バトル」と呼ばれる戦略で、一時的に中国のミサイルが届かない領域まで退き、その後、反撃するシナリオを提示しています▼米軍の一時撤退による「力の空白」を埋めて耐え抜く役割は、日本の自衛隊に期待されています。約2週間で戦争が終結するまで、日本は航空戦力の70%と護衛艦の80%を失い、国内各地の基地が壊滅的打撃を受けるなど「最も深刻な被害」を受けるとされています▼「軍事対軍事」は、相手の報復を生み、日本が焦土となる道です。アジアに平和の流れを広げる外交こそ、日本の安全を高めます。
〈東京民報2023年1月15日号より〉