独立・透明の実態を暴く 日野行介著『原発再稼働- 葬られた過酷事故の教訓』〈2023年1月15日号〉

 岸田自公政権は、ロシアのウクライナ侵略で緊迫するエネルギー情勢を口実に、将来にわたる「原発回帰」の方針を昨年末、決定した。原発の新規建設や老朽原発の延長を認めた。

 政府自らが決めた「可能な限り原発依存度を低減する」、原発の新増設や建て替えも「想定していない」などの方針はどこにいったのか。

 福島原発事故では、大津波の襲来が予見されていたのに規制当局は東電の運転継続を黙認し、悲惨な過酷事故につながった。その惨禍の教訓から原発規制行政は独立性(「独立した意志決定」)と透明性(「情報の開示を徹底する」)の重要性が強調され、原発事故後、原子力規制委員会(規制委)が新設された。事務局の規制庁とともに、経産省の傘下から環境省の外局に移り、独立の体裁を整えた。

 その「独立性」や「透明性」の実態はどうなのか。本書は、入手した規制委の「秘密会議」の会議録をもとに、綿密な調査を続け、 福島原発の事故前と変わらない実態を暴いていく。「秘密会議」の存在自体が、「透明性」を疑わせるものだが、なぜ非公開の会議が必要なのか。関西電力が、原発の安全審査で火山噴火の火山灰リスクを小さく見積もっていた問題で、規制委には、原発を止めて、関電に資料を出し直させ、審査をやり直すのかが問われていた。「秘密会議」はどうしたら原発を止めないですみ、規制の権威を守れるのか。その対策会議だったのだ。

 本書後半は、避難計画を追求。避難所の不足や避難所のスペース不足など、形ばかりの計画がまかり通っている実態を明らかにしている。本書が暴いた「フクシマ後も変わらない原発行政の虚構」の実態を見れば、「原発回帰」の危険性がよくわかる。(ライター・松橋隆司)

東京民報2023年1月15日号より

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