街角の小さな旅30 一枚が創り出す技巧みな世界 おりがみ会館と湯島の梅 

おりがみ会館の入り口

 日本の伝統的文化としての折り紙。「1枚の紙が創りだす世界」として“ORIGAMI”は世界共通の創作になっています。その折り紙で誰もが一度は折ったことのあるのが折り鶴。広島原爆被爆者であり広島平和記念公園にある原爆の子のモデルとなった佐々木禎子さんが病の治癒と平和を願って折った千羽鶴は今日、平和の象徴として世界の人々に受け継がれています。

 「お茶の水 おりがみ会館」(最寄り駅JR御茶ノ水駅、土日休日休館)は、創業1858年の和紙、折り紙、染紙を製造・販売する「ゆしま小林」が開設した折り紙の殿堂です。

 会館の入口で「端午の節句のディスプレイ」が迎えてくれました。一~二階では折り紙や和紙で創られた人形、クラフト工芸などが展示されています。エントランスでは会館でひらかれている教室で使われるサンプルや季節にちなんだ作品が展示されており、今年の干支の兎が獅子舞や羽子板、餅つきなど可愛らしく新年を寿ぐさまに思わず笑みがこぼれます。

 二階は世界の優れた紙作品を展示するギャラリースペース。「伝えたい折り紙展 内山光弘と佐久間八重女の世界」(5月まで)が開かれており、桃の節句のひな、六歌仙の折り紙などの技巧みな折り紙の世界が広がります。

 四階は染め紙工房。いまも染め師の手で一枚一枚、染め付けがおこなわれていて見学することが出来ます。また、折り紙や和紙人形、クラフト工芸などの教室があり、講座を受講できます。

 三階のショップではおりがみ会館オリジナルの折り紙や千代紙、小物や道具など、ここでしか手に入れられないものがずらりと並んでいます。ここでは館長が創作もおこなっていて目の前で作品が生みだされる瞬間に立ち会えます。私はちいさな兎の折り紙をいただくことが出来ました。

湯島の梅

 会館のある湯島は湯島天神、湯島聖堂、神田明神など江戸の昔を今に伝える数少ない場所です。

 かつて江戸城の堀割建設と江戸前入江埋立、江戸市中の水運確保を目的に神田山を削ってつくられた神田川。その東側が湯島で会館のあるあたりは樹木谷と呼ばれ樹木がうっそうと繁った土地だったところ。湯島の地名は江戸前の海から見ると島のように見えたからといわれています。

 その湯島は15世紀末に「寒村の道すがら野梅盛んに薫くんず」(北国紀行・尭惠法印)と記録されたところで、のちに創建された湯島天神は梅の名所として江戸庶民の行楽の地として賑わいました。

 現在は梅園と男坂女坂など300本ほど梅があり花の盛りにはほのかな香りが境内をつつみます。梅まつりは2月8日から3月8日まで。江戸里神楽などの奉納演芸や石川県能登町、熊本県上天草町などの物産展が催され、屋台が所狭しと並びます。

湯島天神の梅

湯島聖堂

 神田川にかかる聖橋を渡ってすぐにあるのが国史跡指定の湯島聖堂。1690年に儒学の振興を目的に創建されたもので孔子廟と塾が置かれ、のち幕府直轄の昌平坂学問所に発展。日本近代化の過程では、文部省国立博物館、筑波大学の前身である師範学校などが置かれ、近代教育発祥の地とされています。建物は1923年の関東大震災でほとんど焼失・再建されましたが入徳門が1690年の創建当時の姿を止めています。

神田明神

神輿深川/山車神田/だだっ広いが山王様

神田明神

  江戸三大祭りのひとつ神田祭りが催される神田明神。もともとは江戸城前の将門塚(千代田区大手町)の近くで創建されましたが、江戸幕府開府後、江戸城の表の鬼門守護の役割から、湯島の現在地に遷座。神田祭は唯一江戸城に入ることが許された祭りとして「天下祭り」といわれました。山車は神輿に変わりましたが、いまも東京を代表するお祭りとして賑わっています。(2021年は中止)

末延渥史

(東京民報2023年2月5日号より)

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