巨大絵画に平和への思い 王希奇(オウ・キキ)「一九四六」展 加藤登紀子さん「人は国を越え手つなげる」
- 2023/2/7
- 文化・芸術・暮らし
旧満州(中国東北部)からの引き揚げ者を描いた中国人画家・王希奇さんの大作「一九四六」東京展が北区内で1月15日まで4日間開かれ、2400人が参観しました。岸田政権による大軍拡が声高に語られるなか、反戦平和への願いを込めた大作が共感を集めました。
この絵は、旧満州南端の渤海湾に面した葫蘆(ころ)島港で引き揚げ船へ向かう群衆を描いた作品。横20㍍、縦3㍍の巨大絵画です。
葫蘆島からの引き揚げ者は1946年から47年にかけて105万人にのぼります。王さんは、引き揚げ者のなかに、男装の少女が遺骨を抱いている写真に「心をひかれた」のがきっかけで、2012年から制作に取り組んでいます。完成したのは2017年。5年の歳月をかけた大作です。
王さんは、1960年生まれで、魯迅美術学院教授。代表作の「三国志・赤壁の戦い」など、歴史をテーマにした作品が得意という画家です。
王さんにも会ったことがある東京展実行委員会の石子順委員長は「戦後生まれの王さんが、あのすさまじい戦争の中で生きていた人々に思いをはせた努力に感動した」とあいさつしました。
「一九四六」展の賛同者に、引き揚げ者の山田洋次(映画監督)、加藤登紀子(歌手)、ちばてつや(漫画家)の各氏が名を連ねています。
山田洋次さんは「満州で少年時代を過ごしていた僕は、日本人が中国人に対して支配者のように振舞っていたことをよく知っています。だから中国人である王希奇さんという画家が、縦3㍍横20㍍の大作を描いて、あの悲惨な引き揚げ者の姿を描き残すという大きな仕事をされたことに感動します」とのメッセージを寄せました。
歌手の加藤さんは、中国・ハルピンで生まれ、1歳8カ月で終戦。1年間は日本に帰れず、難民生活を体験。1946年10月に、母子4人で葫蘆島から長崎県佐世保に引き揚げています。
加藤さんは、東京展のオープニングでのあいさつや、記者の囲み取材で、反戦平和への熱い思いを縦横に語りました。