【書評】格差の現状と解消策に迫る 『男性中心企業の終焉』 浜田敬子 著

 日本のジェンダーギャップ指数(男女格差指数・世界経済フォーラム(World Economic Forum:22年7月発表)は146カ国中116位で、先進国中で最低です。ジェンダー格差後進国です。この本は、日本の男女格差の現状・原因を余すところなく明らかにし、主として企業における解消策に迫っています。

 森喜朗東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長による女性蔑視発言だけでなく、責任ある地位の人物・組織による相次ぐセクハラ事件等、差別意識の根は深く絶望感に襲われるくらいです。

文藝春秋 2022年
980円+税
朝日新聞社入社後、99年からAERA編集部、その後、編集長に。元『Business Insider Japan』統括編集長。著書に『働く女子と罪悪感』など

 しかし、国際的には「D&Ⅰ」(ダイバーシティとインクルージョン=多様性を認め、受け入れて活かすこと)やSDGs(持続可能な開発目標)が企業活動の国際標準となる中で、「日本基準」では、世界の男女格差孤児となりかねません。

 日本では近年女性は結婚しても即退職はしなくなっていますが、相変わらず家事と育児は女性が主となっていることは変わりません。1985年の「男女雇用機会均等法」や第二次安倍政権の「女性活躍」政策等、女性の労働市場への参入を図りつつも「男は基幹労働、女性は補助労働」という基本スタンスは何も変わっていません。世界的にはこのような働き方の改革が目覚ましく進んでいます。この結果が、日本のジェンダーギャップ指数116位です。

 ▽コロナ禍でのリモートワークが与えたインパクト▽管理職への登用が少ないのは彼女たちが望まないからではないか▽クオーター制(政治や企業の幹部において候補者の一定数を女性と定め割り当てる制度)は男女の逆差別ではないか―といった世間によくある論点にも目配りされています。

 著者は、元アエラ編集長・ビジネスインサイダー(日本版)統括編集長等、ジャーナリストであり、自らも仕事・育児・家事と格闘してきた経験を持つ人です。最新の各種調査結果・世界と国内企業のジェンダーギャップ解消の取り組みを豊富に紹介しています。ジェンダーギャップ解消のため闘っている人々に最新のデータブックとして読んでほしい本です。

(松原定雄・ライター)

〈2022年12月18日号から〉

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