女性の健康に必要な薬  避妊薬と中絶薬 薬剤師に聞く〈2023年4月9日号〉

 緊急避妊薬(アフターピル)が薬局で購入できるようにする「スイッチOTC化」について厚生労働省は、今年1月にパブリックコメントを募集しましたが検討会の開催を先送りしています。経口妊娠中絶薬の承認についても3月24日、パブリックコメント(意見公募)が予想に反して多いことを理由に「分析が間に合わない」として審議を先送りました。両薬について混同された認識も多くみられます。一般社団法人SRHR pharmacy PROject(ことば)代表で薬剤師の鈴木怜那さんに聞きました。

すずきれいな 荒川区の薬局に勤務する。地域で女性と子どもの健康をサポートする薬剤師として、女性のヘルスケア講座や性教育の開催などで精力的に活動中。

 鈴木 緊急避妊薬は無防備の性交から身を守るもので、行為から72時間以内に服用することで妊娠を阻止するものです。妊娠を防ぐ効果はおよそ95%といわれています。

 経口妊娠中絶薬は薬を飲むことによって子宮を収縮させ、子宮内膜をはがして妊娠を中断させるというものです。

 経口妊娠中絶薬、緊急避妊薬は女性のヘルスケアにかかわるもので、身体的・精神的・社会的に良好な状態で生きるために欠かせない薬です。

 ―よく、緊急避妊薬を「女性が悪用する」という意見を聞きます。

 鈴木 審議でも懸念されていますが、実際に必要とする女性のイメージがあまりにも現実とかけ離れている点もあります。その女性自身が「今は妊娠するタイミングではない」と感じた時に服用するお薬です。コンドームが外れたり、破れてしまったりなど、多くは妊娠したかもしれないという「妊娠不安」があります。当然、薬ですので副作用の吐き気やだるさが伴う可能性があります。その人自身が今、服用したいと感じた場合はすぐに服用するべき薬です。

 現制度のように緊急時でも診察後に処方となると、金銭的にも精神的にもハードルが高くてたどり着きにくいです。妊娠不安を抱えている女性が必要な情報提供が得られる薬局で購入することが大事です。薬剤師が介入することにより、支援が必要な女性を地域の保健所や支援団体へなどの必要機関へつなげることができます。

 インターネットで海外から緊急避妊薬を輸入する可能性もあります。日本での認可が降りていないので、副作用などが起こった際に救済制度から外れてしまう可能性があります。

相談しやすく工夫も

 ―経口妊娠中絶薬についてお聞かせください。

 鈴木 人工妊娠中絶は女性の人生を豊かに生きていくための一つの選択です。他人の人生の選択に他人がどうこう言えるものではないと考えています。

 現在、日本の人工中絶の方法は週数によって違います。体に負担がかかる手術が多く、海外と違い選ぶことのできる手段が少ないです。医療者が選択肢のメリットデメリットを説明し、本人が自分のからだや心のことを考えて、方法を選択できることが大切です。予期せぬ妊娠を経験しても前向きに生きていくためにも、体に負担の少ない選択肢が増える方がいいのではないでしょうか。

 また、予期せぬ妊娠を避けるため、女性自身が、自分のからだのことや性のこと、子どもを持つか持たないか、いつもつかなどSRHR(性と生殖の権利)の視点が重要になってきます。

 自分の選択肢を増やし、自分を守るために性教育を知ることは大切です。今年度より、幼少期から高校生までの学校教育で「生命の安全教育」が始まります。大人も内容を学ぶ必要があります。

 思春期には親以外にも相談できる大人が必要です。学校の先生、養護の先生もいますが地域の薬局や学校薬剤師も一緒に若者が被害者にも加害者にもならないようアプローチしていきたいです。

ことば
SRHR pharmacy PROject 薬剤師を中心に、くらしの中にSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ〈性と生殖に関する健康と権利〉)が溶け込む社会を作るために活動している

東京民報2023年4月9日号より

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