【特集】専門家「攻撃で都内が戦場に」 自衛隊「強靭化」対象に15基地〈2023年4月16日号〉

 自衛隊が全国約300の基地を、化学・生物・核兵器などによる攻撃に耐えられるよう整備する計画を立てている問題で、都内では15の基地や駐屯地などが計画の対象となっています。ほとんどの施設が住宅密集地にあり、専門家は「東京は、重要な攻撃対象となりうる。住民の安全は戦争を起こさせないことでしか守れない」と強調します。

計画は、防衛省がゼネコンを集めて、大規模な発注計画を説明していたというしんぶん赤旗日曜版(2月26日号)の報道で判明。日本共産党の小池晃参院議員が参院予算委員会(3月2日)で質問しました。

 防衛省がゼネコンに説明した「自衛隊施設の強靭化に向けて」と題する文書では、計画のねらいについて、「武力攻撃・テロ行為等」に対して、「戦い方(シナリオ)にあわせ、ニーズに応じた施設を順次整備」と記しています。

 このため、主要司令部の地下化を推進するほか、CBRNe(シーバーン=化学、生物、放射性物質、核、爆発物による攻撃)に対する防護性能などを付与するといいます(図1)。

 そのために、構造物を強化し、空気ろ過フィルターなどを設置するなど(図2)、生物、化学、核などの大量破壊兵器で攻撃されても、司令部や軍事機能を守る設備が想定されています。

 対象となる全国293の基地のうち、都内では陸海空の自衛隊にまたがる15の基地、駐屯地などが示されました(表)。

 防衛省や統合幕僚監部などが入る市ヶ谷、陸上総隊司令部が所属する朝霞、第一師団の司令部が所属する練馬などが対象となっています。

 また、自衛隊の活動を支える専門部隊の施設が多いのも東京の特徴です。十条は3自衛隊それぞれの補給本部が集まります。目黒は統合幕僚学校と3自衛隊の幹部学校が入り、小平には警務や会計、法務など自衛隊の組織運営を担う人材の育成機関、三宿には負傷者を治療する衛生科隊員の教育機関があります。防衛省ホームページで、「防衛省唯一の地理情報専門部隊」(東立川・地理情報隊)、「全国の自衛隊基地に所在する気象隊を統括」(府中・航空気象群本部)などと紹介する部隊の所属施設もあります。

 防衛省は基地強靭化に、5年間で4兆円もの予算を投入するとしています。

 予算委員会で小池参院議員は、「日本が敵基地攻撃を行えば、反撃される危険がある。だからかつてない規模で基地の強靭化を進めていくということ」と追及しました。

 戦争の危険性を高め、国民生活向上のための予算を押しつぶす大軍拡の流れを止めることは、統一地方選の大争点です。

重要な施設が集まる東京

ジャーナリスト 布施祐仁さんに聞く

 自衛隊基地の強靭化計画について、軍事・安全保障問題に詳しいジャーナリストの布施祐仁ゆうじんさん(平和新聞元編集長)に聞きました。

布施祐仁さん

 ―今回の強靭化計画をどう見ていますか。

 岸田内閣が閣議決定した「安保3文書」では、防衛力の抜本強化にあたって「重視する能力」を7つあげています。その7つ目が、「持続性・強靭性」で、軍事用語でいう「継戦能力」、戦争を続けるための能力です。

 ミサイルなどによる攻撃を受けた時に、司令部も含めてすぐに機能停止してしまうような施設では戦争を続けることは困難です。また、飛んでくるのが、通常弾とは限りません。仮に大量破壊兵器で攻撃されても自衛隊の活動を継続できるような設備を備えることが、「強靭化」のねらいです。

 ―東京で対象となった15の施設の特徴は。

 東京の特徴として、陸海空の各自衛隊全体を指揮する司令部や関連部隊が集中していることがあげられます。これらは相手国から見ても、重要な施設になります。

 また、戦争は実戦部隊だけでは戦えません。地理や気象などさまざまな情報、補給、衛生などを担う部隊、また、新領域と言われるサイバー空間や宇宙での作戦も必要です。そういう特別な機能を持つ部隊や、そのための人材育成機関が各地にあるのも東京の特徴です。

関連記事

最近の記事

  1.  待機児童、介護離職、残業、都道電柱、満員電車、多摩格差、ペット殺処分。こう聞いて、すぐに共通点が…
  2.  「裏金事件」で自民党への批判と怒りが大きく広がるなか、公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途…
  3. 球場とラグビー場の再生案を発表した会=10日、豊島区  神宮球場と秩父宮ラグビー場を取り壊し…
  4.  今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故をうけて11日、日本航空被解雇者労働組合(JH…
  5. 市議会本会議で初質問に立つ荒木市議  市議になる前は、33年間、都内の私立校で数学教員をして…

インスタグラム開設しました!

 

東京民報のインスタグラムを開設しました。
ぜひ、フォローをお願いします!

@tokyominpo

Instagram

#東京民報 12月10日号4面は「東京で楽しむ星の話」。今年の #ふたご座流星群 は、8年に一度の好条件といいます。
#横田基地 に所属する特殊作戦機CV22オスプレイが11月29日午後、鹿児島県の屋久島沖で墜落しました。#オスプレイ が死亡を伴う事故を起こしたのは、日本国内では初めて。住民団体からは「私たちの頭上を飛ぶなど、とんでもない」との声が上がっています。
老舗パチンコメーカーの株式会社西陣が、従業員が救済を申し立てた東京都労働委員会(#都労委)の審問期日の12月20日に依願退職に応じない者を解雇するとの通知を送付しました。労働組合は「寒空の中、放り出すのか」として不当解雇撤回の救済を申し立てました。
「汚染が #横田基地 から流出したことは明らかだ」―都議会公営企業会計決算委で、#斉藤まりこ 都議(#日本共産党)は、都の研究所の過去の調査などをもとに、横田基地が #PFAS の主要な汚染源だと明らかにし、都に立ち入り調査を求めました。【12月3日号掲載】
東京都教育委員会が #立川高校 の夜間定時制の生徒募集を2025年度に停止する方針を打ち出したことを受けて、「#立川高校定時制の廃校に反対する会」「立川高等学校芙蓉会」(定時制同窓会)などは11月24日、JR立川駅前(立川市)で、方針撤回を求める宣伝を21人が参加して行いました。
「(知事選を前に)税金を原資に、町会・自治会を使って知事の宣伝をしているのは明らかだ」―13日の決算特別委員会で、#日本共産党 の #原田あきら 都議は、#小池百合子 知事の顔写真と名前、メッセージを掲載した都の防災啓発チラシについて追及しました。
ページ上部へ戻る