
亡くなった音楽家の坂本龍一さんの遺志を受け継ぐアーティストらが4月22日、神宮外苑(新宿区・港区)の聖徳記念絵画館近くの路上で、同地区の再開発による樹木伐採に反対するデモを行いました。坂本さんが生前、共同主宰していた社会問題を考える団体「D2021」が呼びかけました。同団体によると延べ6000人が参加しました。
永井玲衣さんがデモの趣旨を説明し、「一人の人間として社会に対し発信を続けた生き方を私たちも一人の人間として引き継ぎます」との声明を発表。坂本さんが亡くなる1カ月前に小池百合子知事、新宿、港両区長、文部科学相らに宛てた手紙を紹介しました。
坂本さんは手紙で「目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の木々を犠牲にすべきではありません。これらの木々はどんな人にも恩恵をもたらすが、開発で恩恵を受けるのは一握りの富裕層にすぎません」とつづり、再開発計画の見直しを訴えていました。
声を上げれば社会は変わる
ミュージシャンの後藤正文さんは、作家のいとうせいこうさんから寄せられた「一部の限られた人の経済的利益のために多くの森を破壊することは、日本文化の自滅です」などとするメッセージを紹介しました。
計画見直しを求める署名活動に取り組む学生団体「Amamo」代表の夏花さんは、1年間で1万人以上の署名が寄せられたことに触れ、「声を上げれば社会は少しずつでも変わる」、アクティビストのeriさんは「一人ひとりの声が社会を動かします」と訴えました。
ミュージシャンの篠田ミルさんは、「この場所はコモンズ(公共)。一部の企業、自治体が勝手に(再開発を)決めるようなことは、変えないといけない」と発言。坂本さんの楽曲をメドレーで演奏し、参加者が静かな拍手を送っていました。坂本さんの娘でミュージシャンの坂本美雨さんも「この美しい木々とその周りの無数の命を絶やさずに開発する方へ、舵を切っていただけるよう切に願います」とのコメントを寄せました。
東京民報2023年4月30日・5月7日合併号より