3000本もの樹木を伐採して進める神宮外苑の再開発(新宿、港区、約28万平方メートル)問題で、住民説明会が17~19日の3日間、開かれました。住民らが強く望んでいたものです。しかし、対象が限られた上に報道陣の取材も認めず、住民から「誰もが参加できる説明会の開催を」との抗議の声が上がるなかでの開催となりました。
再開発事業者は三井不動産、明治神宮、独立行政法人・日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4者。神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を交換して建て替え、超高層ビル2棟を建設。樹齢100年を含む多数の樹木の伐採・移植が計画されています。
これに対し、「一部企業の利益が優先され、都民の声が無視されている」「神宮外苑のシンボルであるイチョウが枯れる恐れがある。歴史的な景観も失われる」「SDGs(持続可能な開発目標)に逆行している」「伝統ある神宮球場、秩父宮ラグビー場を守ってほしい」などの声が都民、専門家など幅広い人たちからあがっています。計画の中止・見直しを求めるネット署名の賛同者は主な4つを合わせると約31万人にものぼります。
また、日本イコモス国内委員会は事業者提出の環境影響評価書に虚偽・誤りが多数あるとの厳しい指摘をしています。
こうした批判を受け、事業者は住民説明会を開催したものの、参加対象を敷地境界から約380メートル以内の住民・事業者1万3000世帯・法人に限定しました。
事業者側の発表によると、3日間で計381人が参加し、41人から86件の質問・意見が出されたとしています。内容は「なぜ樹木を伐採してまでスポーツ施設の建て替えをするのか」「4列のイチョウ並木はどのように保全するのか」などがあったとしています。
説明会3日目(19日)の会場となった四谷区民ホール(新宿区)前では、「神宮外苑は歴史的遺産 樹木を切らないで」と書かれた横断幕を掲げた人たちが抗議の声をあげました。
最近まで新宿区に住んでいた50代の女性は「毎日のように子どもを連れて新宿御苑で散歩していました。樹木1本1本がかけがえのないもので、開発のために1本も切ってほしくありません。こんな大事なことを都民に知らせずにこっそり進めておいて、もう決まったことだからと強引に進めるなんて信じられない。都民の声を聞いて計画を見直してほしい」と憤りました。
新宿区民からは「新宿区は神宮外苑に接しているのに、ほとんどの区民は説明会の対象になっていない。だれもが参加できる説明会を開いてほしい」と訴えました。
事業者側は説明会での質疑内容は、7月中を目途にプロジェクトサイトで公開するとしています。
東京民報2023年7月30日号より