西武池袋線石神井公園駅南口西地区の再開発事業(練馬区石神井3丁目地内)をめぐって、地権者と周辺住民が東京都に再開発事業組合設立認可の差し止めと地区計画変更などの取り消しを求めている「石神井まちづくり訴訟」の第7回口頭弁論が14日、東京地裁(品田幸男裁判長)で開かれました。
同開発は、都市計画232号線(幅員16メートル)の建設とともに、その沿線の同駅前に、高さ約100メートルの超高層ビル(地上26階、地下2階)を立てる計画です。
石神井公園駅周辺地区は、地域住民と自治体の協議で定めた「地区計画」があり、駅前商業地区は建物の高さの最高限度を35メートルに抑え、同駅から石神井公園に向かって徐々に建物の高さを低くしてスカイラインを整えるという、街づくりのルールがありました。
しかし、地区計画制定の約2年後に、同区主導で再開発準備組合が設立され、建物の高さ制限を100メートルに緩和(一定要件を満たせば高さ無制限に)する地区計画の変更案が提示されました。再開発に反対する住民の声を無視して、20年末に都市計画が決定しました。
必要性の理由を突然取り下げ
前回の第6回口頭弁論で、参加人の練馬区は、地区計画変更の必要性の理由と主張していた3点を原告に指摘され、「高さ制限とは無関係」と突然取り下げました。
裁判長からも「なぜ計画変更をしたのか理解しかねる」と主張の不十分さを問いただされました。
都による組合設立の認可処分を争う裁判ではあるものの、その根拠となる都市計画の変更権限者である練馬区が参加人として矢面に立っています。
練馬区の主張に裁判所が配慮か
14日の口頭弁論で裁判長は、改めて2つの争点を示し、それをもとに双方が主張する、今後の進行方針を示しました。
争点の一つ目は、変更前地区計画のもとで100メートルの高さは成り立つかというものです。
原告は、都市計画法や建設設計上の高さ制限がある場合は、特例緩和限度は1.5倍と主張。変更前地区計画が35メートルであったことから、50メートルが法体系上の制限となるため、今回の市街地再開発事業の高さは認められないとしています。
区は、要綱を変更すれば、区長の判断で無制限に高さを変更できると主張していますが、要綱の変更理由を説明できておらず、裁判長も要綱の提示を求めています。
二つ目は、都市計画法上の計画変更必要性の有無についてです。次回、10月30日の第8回口頭弁論で双方が主張します。
弁護団は、「裁量権の範囲」で棄却される行政訴訟が多いなか、事件に真摯に向き合おうという表れではないかと裁判長を評価しました。一方で、示された2つの争点は、これまでの法廷で争ってきた内容と異なるとも指摘。特に、二つ目の変更前地区計画に再開発計画が適合しているかについては、計画変更の必要性を主張できない練馬区に、助け舟を出そうとしているのではないかと疑念を示しました。
区は退去命令の準備も始める
報告集会で原告の女性は、裁判と同時並行で、再開発事業組合の求めに応じて、区が住民の代印を押していると訴えました。区は住民への退去命令の準備も始めており、12月にも命令が出る恐れがあることから、弁護団は執行停止を求める手続きを次回の期日前後で行う可能性を示しました。
東京民報2023年9月24日号より