東京五輪選手村(中央区晴海)整備の名目で、小池百合子知事が都有地を9割引きで大手不動産会社に投げ売りしたことは違法だとして、東京都を相手取り1209億円の損害賠償請求を求めている住民訴訟の原告団は11日、最高裁に上告理由書を提出し、司法記者クラブで会見しました。
(ジャーナリスト・岡部裕三)
問題の都有地(約13.4ヘクタール)売却契約は小池知事が2016年に不動産11社と締結。これに対し中野幸則氏らが17年、都を相手取って小池知事、舛添要一前知事、元都市整備局長、不動産11社に損害賠償請求をするよう求め東京地裁に提訴。地裁は21年の判決で、東京高裁も今年8月の判決で都有地投げ売りを追認し住民の請求を退けました。原告側は不当判決だと抗議し、最高裁に上告しました。
上告理由書は、都有地投げ売り処分行為が憲法第14条「法の下の平等」、92~94条の「地方自治の基本原理」などに違反しており、都の不法行為を追認した東京地裁と高裁判決を厳しく批判しています。
会見は中野原告団長、原告代理人の淵脇みどり弁護団長、千葉恵子弁護士らが行いました。
淵脇氏は▽都が市街地再開発事業の名目で、都議会や財産価格審議会にも諮らず、正式な不動産鑑定評価を行わずに都有地を公示価格の10分の1の廉価で売却したことは違法▽選手村隣接地に中央区が学校を整備するため都有地を取得した際には、財価審に諮り5割引で売却している▽都は土地売却の前に不動産会社と価格協議を行い官製談合を行った―と批判。原告が裁判所に対し協議記録の提出を請求したのに対し、都が文書提出を拒否したことは大問題だと批判しました。
淵脇氏はまた「選手村用地は晴海地区の基盤整備費すら回収できない価格で売られ、不動産業者に莫大な利益を与えた。裁判には不動産鑑定士も原告に加わり、都市計画の専門家も批判する意見書を提出している」と指摘しました。
中野原告団長は「地裁、高裁の判決は司法への信頼を崩す事例になった。最高裁はしっかり判断してほしい」と語りました。
記者の「三井不動産グループなど土地取得企業に都幹部が多数天下りしているが」との質問に、市川隆夫「晴海選手村土地投げ売りを正す会」事務局長は「不動産会社が都政を食い物にしていることは許しがたい。選手村は東京五輪の最大の負の遺産のひとつだ」と批判しました。
小池知事は、情報公開は「1丁目1番地」と公言してきましたが、都有地投げ売りの協議記録の開示請求を拒否し続けていることは大問題です。
東京民報2023年12月24日号より