土壇場で新主張、結審延期 目黒区 被災者追い出し裁判〈2024年1月14日号〉
- 2024/1/14
- 都民運動
東日本大震災の津波で宮城県気仙沼市の自宅兼事務所を失い、目黒区の応急仮設住宅に避難した女性(69)に対し、区が支援打ち切り後の家賃820万円を超える賠償を請求している民事訴訟の第12回口頭弁論が12月21日、東京地裁(金澤秀樹裁判長)で開かれました。

この日は結審の予定でしたが、原告の目黒区が提出した全13ページの最終準備書面には、11ページにわたり、新たな主張が展開されていました。被告代理人の山川幸生弁護士は憤り、裁判官に反論の機会を強く訴え。傍聴席からも「恥ずかしい」「ひきょうだ」といった声が飛び交いました。
最終準備書面は、原告と被告の双方が訴訟の最終段階で裁判所に提出する準備書面で、通常の準備書面とは異なり、すでに訴訟で主張した事実と証拠とを結びつけ、裁判所を説得することを目的としています。これまでに提出した準備書面の総まとめであり、新たな主張・事実を伴わないことが大原則といわれています。
裁判官は結審の姿勢を固持したものの、約5分間の合議により、最終口頭弁論の期日を設定。1月31日に結審し、3月中に判決を下す予定です。
ひきょうな態度に批判
閉廷後に報告集会を行い、山川弁護士が原告の最終準備書面について説明。区の新たな主張は、「女性が気仙沼市の災害公営住宅を確保しており、すでに気仙沼市から住宅支援を受けているため、目黒区が支援をする必要はない」という内容でした。
女性が気仙沼市の災害公営住宅に入居を申し込み、2017年4月に入居決定通知を受けたことは事実です。しかし、女性は、ともに被災した病気の夫(2018年10月死去)が重篤化したため、気仙沼市に「帰るという選択肢がなくなった」と電話で入居を断り、気仙沼市への帰還を断念していました。
女性が目黒区に避難したのは、夫のがん治療のため。気仙沼市の紹介で友好都市の目黒区に避難し、区の指示に従い区民住宅に入居。応急仮設住宅の打ち切り時は、危篤の夫を抱え、低廉な区営・都営住宅に応募を続けたものの当選できず、身動きが取れない状況でした。
山川弁護士は、「目黒区は住宅支援の義務や責任がないことを何度も繰り返し主張してきたが、その理由については一切説明せず、隠していた」と指摘。「目黒区の姿勢はまったく認められない、ひきょうな訴訟態度である」と批判しました。
裁判と報告集会には、日本共産党、立憲民主党、れいわ新選組の目黒区議会議員も参加。共産党の岩崎ふみひろ区議は、「怒りでいっぱい。今後とも見守っていきたい」と話しました。
東京民報2024年1月14日号より