JR東海が計画するリニア中央新幹線(品川‐名古屋)のトンネル建設工事をめぐり、地下40メートル以深の大深度地下を使用する「大深度地下使用法(大深度法)」は違憲であるとして、トンネル掘削が予定されている大田区、世田谷区、町田市の住民45人が原告となり、国に認可の取り消しを求める訴訟の第1回口頭弁論が7月30日、東京地裁(品田幸男裁判長)で開かれました。
リニアトンネルのルート上に自宅がある、保科由記子氏が意見陳述。リニアトンネル工事と同じ「シールド工法」による東京外かく環状道路(外環道)の工事で、世田谷区の野川に致死性の酸欠空気が噴き出したこと、調布市の住宅街で陥没事故が起きたことを強調。JR東海の住民説明会は「不信と不安がつのる一方で、事業への理解も納得もできない。認可した国は住民の生命・財産・生活を何だと思っているのか」と、訴えました。
原告ら訴訟代理人の島昭宏弁護士が、訴訟の概要や取り消し事由、法令違憲を陳述。「時代が変わり、持続可能な社会を議論しなければ未来はない。リニアは速くて便利なものかもしれないが、財産権や平穏生活権、環境破壊が伴う」と主張。訴訟を通じ、日本社会の今後のあり方を議論したいと述べました。
閉廷後の報告集会で、足立悠弁護士は「リニアは過去の価値観においてのみ存在しうる遺物」と指摘。リニアは大深度法16条の1号、3号、4号に該当しないため、国の認可は違法であり、憲法29条2項(財産権と公共の福祉)にも反すると解説しました。
国側は答弁書で、一部の原告は訴訟を提起できる資格「原告適格」がないと主張。足立弁護士は、「一人でも原告適格が認められ、裁判所が認可を取り消すべきだと判断すれば、リニアは止まる」と説明しました。
一方、岸田文雄首相は7月31日、三重県亀山市で進むリニア新幹線の工事現場を視察。2037年の全線開業に向けて国が全面的に支援すると発言し、開業に意欲を示しています。
東京民報2024年8月11・18日合併号より