多様な生態、ディープに迫る 国立科学博物館 特別展「昆虫MANIAC」〈2024年8月11・18日合併号〉

 専門が異なる5人の研究者によるマニアックな視点とセレクトで、ムシたちの多様性をより深く、ユニークに追究する特別展「昆虫 MANIAC」が、国立科学博物館(台東区)で開催されています。2018年の夏に同館で開かれた大規模な特別展「昆虫」から6年を経て、最新の昆虫研究を織り交ぜ、さらに面白く凝りに凝ったムシの世界を展開。多様性の扉を開け、ディープなムシの世界に飛び込みましょう。

同展を監修した5人の研究者=7月12日、台東区

 昆虫は地球上で最大の多様性を誇る生物群で、その数は約100万種。世界には未知の昆虫が無数に存在し、身近な環境にも新種が眠っています。

 展示は3つのゾーンで構成。ゾーン1「昆虫とムシ」は、両者の違いや定義、完全変態と不完全変態の昆虫など、基本的な知識の再確認からスタート。本展では、昆虫および陸生の節足動物を総称し、「ムシ」として扱っています。

 ゾーン2「多様なムシ」には、5人の研究者がそれぞれ担当した、5つの扉を設置。「トンボの扉」「ハチの扉」「チョウの扉」「クモの扉」「カブトムシの扉」があり、研究者の個性とこだわり、ムシへの愛情が詰まっています。「MANIAC」の真髄に触れられる空間です。

 ゾーン3「ムシと人」では、ムシと人との密接な関係性が学べるほか、ムシの存在意義や気候危機について考えさせられます。

221年に一度 大発生の素数ゼミ

 今回、特に注目したいのは、13年または17年周期で大発生する「素数ゼミ」。13年と17年の公倍数となる221年に1度、両種の発生がアメリカ(一部カナダ)のどこかの地域で重なります。出現するセミの総数は、1兆匹と推察。素数ゼミは日本で知られるアブラゼミやクマゼミよりも小さく、体長2~3センチほど。しかし、1兆匹の素数ゼミを縦に並べると、地球と月を33往復する長さと言われています。

 今年は13年ゼミと17年ゼミが、アメリカで大発生。本展の取材班は素数ゼミの研究チームと共に、イリノイ州シカゴを訪問。5月末から4日間にわたり捜索した素数ゼミの記録が、「トンボの扉」に展示されています。

 同扉を担当した、同館動物研究部 陸生無脊椎動物研究グループ 研究主幹の清拓哉氏は、「221年に一度の出来事で、私たちにとっては一大イベント。これは取り上げるしかないということで、扱わせていただいた」と語ります。

 日本のセミとの違いについて、清氏は「翅脈しみゃくはねの網模様)を見てください。全然違いますよね。つまり、生態学的に離れたグループだということが分かります」と説明。「昆虫研究者は翅一枚渡されただけで、翅脈から昆虫の種類が判別できるのです」と、マニアックに答えてくれました。

 本展では、同取材班が録音した素数ゼミの鳴き声が聞けるコーナーを設置。現地では、パチンコ店と同程度の音量で、大合唱しているそうです。

穴に顔を入れると素数ゼミの激しい鳴き声に包まれる

 セミ関連でぜひ見てほしいのが、沖縄県石垣島のごく狭い地域にしか生息しない「イシガキニイニイ」。2017年以降、確認されてない絶滅危惧種です。

2017 年から見つかっていない「イシガキニイニイ」
巨大模型や体験コーナーも
体を変形させて産卵する「エゾオナガバチ」の巨大模型

 館内には、細部にこだわって再現した5体の巨大模型を展示。下あごでアカムシを捕らえる「ギンヤンマのヤゴ」、体を変形させて産卵する様子が興味深い「エゾオナガバチ」など、必見です。

 「シタバチ」が引き寄せられる「におい」を実際に嗅ぐことができるコーナーや、壁や天井を自由に歩ける甲虫の「あしのうら」の微細構造、美しい色合いでアートなフォルムのイモムシやケムシの紹介などもユニーク。1日見て回っても楽しめるボリューム。ムシ好きはもちろん、苦手な人も、より愛着が湧き、ムシとの向き合い方が変わることでしょう。

カマキリの仲間を集めた標本

特別展「昆虫 MANIAC」
国立科学博物館[東京・上野公園](台東区上野公園7-20)
会期:2024年7月13日(土)〜10月14日(月・祝)
開館時間:9時〜17時(入場は16時30分まで)※毎週土曜日および8月11日(日)〜15日(木)は19時まで開館延長(入場は18時30分まで)
入場料(税込):一般・大学生2100円、小・中・高校生600円

東京民報2024年8月11・18日合併号より

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